加瀬

非常宣言の加瀬のレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.1
物語の冒頭、飛行機が飛び立つまでのカットバックが効果的で良かった。
地上で行われる犯罪予告の操作と空港で行われる飛行機離陸の準備が同時進行で進んでいく。容疑者の部屋で死体を見つけ、刑事の悪い予感が確信に変わると同時に飛行機は離陸してしまう。離陸と同時に捜査の手が届かなくなってしまう、ジェヒョクの独壇場になってしまう映画的な高揚感を覚える。

太陽光の使い方が印象的で、空気中に舞うウイルスを映すカットは神々しくもあり、恐ろしくもある。
中盤で飛行機が方向転換をすることを太陽光の差し方で表現する。目印ががない空だからこそできる、映像ならではの表現してで素晴らしい。

飛行機の墜落時の機内の映像が秀逸だった。スローモーションでかたむく水や浮き上がる髪を見せて、その静寂の後に墜落する機内を映される。お腹いっぱいな程に映される混乱した機内は他に類を見ない撮影技術だった。

各国の対応も昨今のコロナ情勢を踏まえると有り得なくもない。自国民の命を優先するのは当然だろう。日本があれほどの武力行使に出るとは思えないが。
各国の対応も機内の人物の対応も明らかに悪者としてカテゴライズできないのが難しい。それぞれに正義感を持って感染を防ぐために選んだ行動だから見る角度によって善人と悪人が入れ替わる。コロナ禍を経験した鑑賞者は実体験も合わさって心にズンとくる。

意外な形で非常宣言が行使されるがハワイや日本への着陸は叶わなかった。非常宣言の意味はあるのかが疑問として残る。
加瀬

加瀬