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非常宣言のinotomoのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.1
旅行客達で賑わう、韓国の仁川空港。ハワイに向かう便には、アトピーを患う娘の療養のために、ハワイに転居しようとしているジェヒョクが乗り込もうとしていた。同じ便には、元製薬会社勤務のリュ・ジンソクが乗り込む。飛行機が離陸した後、リュ・ジンソクの手により、飛行機内でバイオテロが引き起こされる。彼は犯行を予告する動画をインターネットで公開しており、捜査のためにク・イノ刑事がリュ・ジンソクの家を捜索していた。ク・イノ刑事の妻は、休暇を利用し旅行をするために、同じハワイ行きの便に乗り込んでいた。また、飛行機の副操縦士のヒョンスは、過去にジェヒョクと関わりを持っていた。
監督はハン・ジェリム。

オールスターキャストで繰り広げられる群像劇で、飛行機パニック映画。ハリウッド大作に引けをとらない、ビッグバジェットムービーで、2時間半の長さを感じさせない極上のエンターテイメント作品。飛行機パニック映画は、それほどたくさん見てはいなくて、思い出すのは「ユナイテッド93」くらいなんだけど、密室で地上からかけ離れた空の上、急には地上に戻れない場所で起こる出来事は、それだけでドラマになるし、そこから生み出されるドキドキは半端ない。今回は機内で殺人ウィルスがばら撒かれるバイオテロが起きるのだけど、世界的に起こっている、コロナによるパンデミックの混乱を示唆するような場面があり、考えさせられる。またアトピーを患い「人に移るのでは?」と胸を痛めるジェヒョクの娘のスミンの心情が何とも切ないし、そんな幼いスミンでさえ、感染者として差別まがいの態度をとられたり、今のコロナ禍だからこその、意義あるテーマを描いているように感じた。機体の着陸に対するアメリカや日本の対応、とりわけ日本の自衛隊の対応にはちょっと苦笑いしたし、少しご都合主義のような展開があったり、ク・イノ刑事の、決死の行動からの、その後の展開が予想できたり、気になる部分はあったけど、映画として充分に楽しめたし、多分ここまでの作品は、今の日本では作れないのでは、とも思った。韓国映画恐るべし。

オールスターキャストで、セリフの少ない端役の人達も、みんな韓国ドラマや映画で見たことある人ばかりで、それを見つける楽しさもあった。ソン・ガンホと国土交通大臣役のチョン・ドヨンの共演に、映画ファンならきっとグッときたと思う。イ・ビョンホンが演じたジェヒョクの役は、ハリウッドでリメイクするならぜひトム・クルーズにやってもらいたいところ。
リュ・ジンソク役のイム・シワンくんは、ドラマ「ミセン」の印象が強いから、そのギャップにびっくり。
ところでソン・ガンホが演じたク・イノ刑事とコンビを組む後輩刑事を演じたヒョン・ボンシクは、何とまだ38歳!副操縦士のヒョンスを演じたキム・ナムギルよりずっと下。老け顔と、ドラマ出演時とかにも話題になってたけど、ちょっと笑える。

物語として、誰か一人がヒーローではなく、それぞれの立場で、みんながベストをつくし、最良の判断をしたから得られた結果だったという展開がとても良かったと思うし、オールスターキャストの意味があったと思う。新年1本目の劇場鑑賞としてナイスチョイスでした。
これから飛行機に乗る機会があればちょっと怖いけど。
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