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非常宣言のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.1




“おじさんもそうでした、私たちに対して”






人間社会全体への抗いや喚起が主体であり、単なる航空機テロ映画として観ると色々と疑問が湧くので、前半から中盤に至るテロに纏わるシーケンスよりも、後半に於ける韓流ならではのヒューマンドラマや心理描写、社会全体へのカタルシスを捉える方がずっと面白い作品。


兎にも角にも、
イ•ビョンホン×ソン•ガンホ、この韓流スター二人の地上と上空の共演は見応え有りで、一切中弛みが無い緊張感や、航空機内でのスリリング且つ追い詰められていく人々の心理描写が素晴らしい!
【新感染】の一作目にも匹敵する、この追い詰められた時の人間の本性が、とても生々しくてリアルで怖い。


航空機故のリミッターストーリー上、というかエンタメとしてのご都合主義な演出や脚本を突っ込んでも、この映画からは何にも得られない。

登場人物それぞれの正義だったり、過剰な家族愛の演出だったり、もどかしい政治的な判断だったり、パンデミックを経た我々が得た経験や憤りや気付きを以ってしても、そんなわけで無いだろ!と突っ込める箇所は幾らでも出てくる。



レビュー冒頭で抜粋したある女子大生?グループのうちの一人の娘が放ったこのセリフに全てが集約されている。



手のひら返しで感情を剥き出しにする人間の本性そのもの。
それらがとても繊細に描かれている作品なので、そこから学び得るものをどう吸収するかによって、この作品の価値は個人個人で随分と変わる気がする。

その部分が本作の重要なカタルシスなので、
“あの短時間であれだけのデモ?”
“日本の自衛隊があんな威嚇?”
“感染のルールが曖昧過ぎん?”
等々、、、
わんさか出てくるツッコミどころを掘り下げるような鑑賞はかなり無意味で愚の骨頂。


追い詰められた時に露わになる人間の本質や、その場に居合わせた時自分ならどうする?と、なるべく没入して深くリアルに自己投影と自己問答することがこの映画の価値なんじゃ無いかな、、、と。


そんなクソ真面目な感想しか出てこないほどに、娯楽エンタメというよりも、社会派ヒューマンドラマに感じてならなかった。



【ホテルムンバイ】や【アメリカンスナイパー】のような実話に基づいた心情描写のソレに近かったと思ったのは私だけ?




パニックムービー
ヒューマンドラマ
家族愛
航空機テロ
パンデミック
航空機アクション
政治ドラマ
組織の隠蔽気質

様々な要素が贅沢に味わえる、なかなか見応え充分な韓国映画でしたわ。



それにしても、ソン•ガンホ作品ってなんでこうもハズレが無いんです?
すごい俳優さんだなぁ。
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