「ガンダム」シリーズの原作者、富野由悠季が、「∀ガンダム」以来15年ぶりに総監督を務めたTVシリーズ「Gレコ」の劇場版。これが五部作の最終作となる。
五部作だなんて商売のやり方として気に入らないけれど、80才を過ぎた富野が今も現役で新作を作り続け、もしかするとこれが最終作になるかも?というタイミングなのだから、長年彼を追いかけてきた自分としては、じっくり見届けたい気持ちにもなる。
アムロやシャアが活躍した宇宙世紀から数千年後の時代を舞台とする本作は、エネルギー問題を軸に、それを管理する権力と宗教、身分制度等、富野ガンダムらしい風刺性を目いっぱい盛り込んでいて、ストーリーが進む毎に発見と驚きがある。
少なく見積もって6つの勢力が登場する世界観故に難解と言われる作品ではあるけど、富野曰く「軍記ものは止めた」との事で、確かに国家や軍と言った概念を捨てて鑑賞すれば、作品の見え方が随分すっきりとする。
つまり「Gレコ」は属性を超えた個人が主体の話。往年の宇宙世紀ガンダムで描かれたオールドタイプからニュータイプへの進化から40年を経て到達した、新しい世代による人類の新しい「認識」の物語なのだと思う。
近年は「ククルス・ドアンの島」のリメイク等、古いガンダム作品をキャラクター中心にリメイクしたノスタルジックな劇場作品も生まれているけど、それらは富野とは無関係に作られている。ファースト世代である僕にとっては、今までに無い新しいアニメ体験を味合わせてくれる、本作のような富野作品こそが「ガンダム」なのだ(初めてガンダムを見た時も難解だと感じた)。
ちなみに、この「Gレコ」の劇場版はタイトルから「ガンダム」の文字が消えている。富野ガンダムはもはや「ガンダム」である事にさえ拘っていない。いやはや、さすがだ。実に自由な作品である。