柿トマト

MEMORY メモリーの柿トマトのレビュー・感想・評価

MEMORY メモリー(2022年製作の映画)
3.0
病気を題材にするなら真っ直ぐ、丁寧に扱って欲しい

アルツハイマー病を発症してしまい、仕事内容が覚えることが困難になった殺し屋アレックス(リーアム・ニーソン)は、最後の任務を決意。しかし、ターゲットの1人が少女であることを知り、契約を放棄したアレックスは報復として自身命を狙われてしまったり、また少女も別の暗殺者によって葬り去られてしまう。これに激怒したアレックスは人身売買組織と、とある大富豪の存在との戦いを挑む物語。殺人事件を追う刑事役にガイ・ピアース、大富豪役にモニカ・ベルッチが脇をかためる。

リーアム・ニーソンが殺し屋を演じるって情報までは普通のアクション映画かという印象だったが、ここにアルツハイマー病となれば俄然興味をそそる題材。ついにリーアムも自分が老いという敵と戦うことに意欲が出てきたのかと、ワクワクしたものだ。

しかし、今作ではそのワクワクも無かったことになってしまった。「アルツハイマー病に苦しむ殺し屋」「人身売買組織の闇」「アメリカ・メキシコ間の警察・FBIでの擦った揉んだ」の3要素が見事に絡まり合い、見づらい作品となっている。端的にいうとそれぞれの問題が薄っぺらく見えてしまう。本当に病気や人身売買、警察の関係性についてリサーチしたのか?脚本書いてる時に詰め込み過ぎたのではないか、と考えなかったものなのか。もっと素直にアルツハイマー病とはどんな病気なのかや、それに苦しむ人間がどうなるのかっていう描写をどんどん入れて欲しかった。

個人的なことを言うと親戚に認知症の方がいるのだが、接してると記憶が思い出せないだけではなくて、感情の起伏や、物事の意欲を失っていくのがよくわかる。親戚として接するのに、自分を思い出してもらえないことよりも、そういう生きる気力を無くしていくのが手に取るようにわかるのが、忍びなかったりする。アルツハイマーという病気を扱うならそういう部分をもっと、作品にこめてほしかったっていうのが本音。このままでは薄っぺらいし、何より不誠実だと思う、エンターテイメントとしても楽しめない。
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