ユウ

“それ”がいる森のユウのレビュー・感想・評価

“それ”がいる森(2022年製作の映画)
2.6
最序盤はホラー的な演出がよく出来ており、見応えがある。
未知の敵と、それの正体を見破って攻勢に転ずるというのは往年の名作、プレデターとのストーリー的類似を感じた。
だが、「それ」の正体についてはかなり早々とネタバラシがある。
正直、もう少し謎に包まれた状態を引っ張ってホラー的側面を引き出して欲しかった。
そして、「それ」の正体がわかってからの展開については、ホラー、スリラーとしては正直いい言葉が見つからない。
全体的に陳腐であり、不気味さやグロテスクさも練り込みが甘い感じがする。
怖くない上に、それの技術力や身体能力や知能など、知性体としてのバランスが取れていなさすぎる。

プレデターを引き合いに出したついでであちらと比較すると、プレデターは高い技術力と知性に肉体派の人間程度の身体能力である。そして、何より高潔であるがゆえにタイマンに応じて敗北を喫するわけだ。

では本作のそれはというと、高い技術力とやや低い知性、そして不安定な身体能力。
特に身体能力の不安定さはホラーやスリラーとしてはいただけない。
圧倒的なパワーで蹂躙するという演出と執拗な弱攻撃で威圧をかけるという演出をどちらも盛り込んだせいで、クリーチャーとして統一感がなくやっつけ感溢れる出来になっている。
技術力と知性の齟齬についてはSF的な理由づけが簡単に出来たはずなのに行われていない。これもやはりやっつけ感を感じた。
観ていて、やりたいことはわかったが、そのやりたいことのアンバランスさをうまく調和させられなかった作品だ。

だが、ホラーやスリラーではなく、単なる日本のB級映画として観ると、そこそこ面白い。
ネタバラシが早いと言ったが、すなわちテンポの良さを持つということでもある。
ユウ

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