cinemageek

ザリガニの鳴くところのcinemageekのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.2
ザリガニの鳴くところ

監督/オリヴィア・ニューマン

出演/
デイジー・エドガー=ジョーンズ
テイラー・ジョン・スミス
ハリス・ディキンソン
マイケル・ハイアット

ディーリア・オーウェンズが2018年に発表した小説が原作
ディーリア・オーエンズは、69歳で初めて執筆したミステリー小説。
動物行動学者を研究し博士の肩書を持つ学者

ポイント1
ミステリーよりも恋愛映画であり
少女の成長物語でヒューマンドラマ

予告やポスターなどではミステリー性を全面に押し出しているが、内容はラブストーリーであり、法定サスペンスであり、一人の女性の成長物語になっている。
ミステリー性はそれほど強くないので、注意が必要

この時点で、アンミカをつかったTVCMが全くもって的はずれな内容になっている

ただ、ミステリー映画などを観ることが少ない人、少なかった人にとっては、ラストは驚きになるのは間違いない


ポイント2
1969年という時代を描いた背景を知るとより深みがある


当時はまだまだ黒人差別が強かった頃
善意の塊とも言えるジャスピン夫妻の優しさが染み入るが、
この夫婦も白人からの圧力に耐えながら、カイアを支えフォローするという背景も知っておくといいかもしれない


ポイント3
自然の掟と人間の摂理を
人間関係に置き換えた設定


自然というのは弱肉強食
人間の世界は法律と倫理での枠組みがある
この違いを踏まえて、出てくるキャラクターの立ち位置を踏まえてみたときに、この映画の本質が見えてくるかもしれない。


1968年のノースカロライナ州。
湿地帯にある火の見櫓のもとで1体の死体が見つかる。それは街の権力者の息子で誰もが知るチェイスのものだった。
容疑者として浮かび上がったのは湿地帯に暮らす少女カイア。
彼女は幼い頃から一人で湿地帯に暮らしており、町の人々の多くが彼女を蔑んでいた。

拘置所の中で弁護を名乗りだしたトム(デヴィット・ストラザーン)に、自分の過去を話し出すカイア。
それは彼女の純粋さと想像超える苦労の物語であった
父親のDV。それから逃れるため逃避行した母親と兄弟。ひとり残った彼女を見捨てた父親。
そして 親切なテイトとの恋と別れ。チェイスから声をかけられたことだった
彼女の人生の流れから、チェイス殺害の動機は見えるものの、明確なアリバイがあった。

しかし裁判はカイアを容疑者として淡々と進むのだった。





主演のデイジー・エドガー=ジョーンズの演技がすごい

父親のDVに耐えかねて母親や兄弟が逃げ出した家で一人残った彼女の芯の強さの片鱗がチラチラと見える中成長。
それをおとなになってからたくましく生きる彼女の様子は一つの強さでもある

それを演じきったデイジー・エドガー=ジョーンズの演技は必見


スクリーンに映し出された、ノースカロライナにある湿地帯をはじめとする自然の美しさにはただただ圧巻
原作を読んでいる立場からすれば、不満…とまではいかないにしても、その要素を省く?というポイントはある

例えば 無名の詩人アマンダの詩であったり、チェイスが街の権力者の息子であることに加えてアメリカンフットボールのクォーターバックという目立つポジションで人気があったこと。
ホタルをつかった演出などは無かったり、抑えめだったりしたのは情報量が多くなりすぎるからかも知れない


何度もいうが、この映画はミステリー性を注視するのではなく、一人の女声の成長物語。ヒューマンドラマとしてみるのをおすすめする

ただ子どもにとって母親の存在の大きさと安心感を最後に描くところは、国を分けても違うところでもあるのも描かれている。
カイアにとって、やはり母親の存在は特別だったのだろう。
その母親の存在を示すアイテムやシーンが少なかったのは、ラストに向けての布石として少し足りなかったかもしれない
ただ、鬼滅の刃 無限列車編 でも 煉獄さんが母親の存在、残した言葉を思い出すシーンをちょっと思い出したりした


シナリオ自体は原作を丁寧に。そして上手に時系列を入れかるなど見やすくなっている。
オススメの1本

https://www.youtube.com/watch?v=agS3ccmBLyU
cinemageek

cinemageek