サマータイムブルース

ザリガニの鳴くところのサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.7
これ、原作は小説なんですね、しかも米国でベストセラーという
例によって、原作小説は未読です、はい

なにが悪いって、諸悪の根源はカイア(デイジー・エドガー=ジョーンズさん)のオヤジだよね
飲んだくれで家族に暴力振るって、家族を養う能力もない
こういうどーしようもない男ってどこの国にもいるんだな

幼少期のカイヤを演じたジョジョ・レジーナちゃんが可愛い
ボロボロの服を着て、裸足で街を歩く姿に、見ていて胸が苦しくなります
そして家族が1人、また1人去っていき、とうとうひとりぼっちになってしまいます
どんな気分なんだろう、想像すると、心がザワザワして落ち着かなくなります

街の人たちがカイアを異端者として差別する様子には恐怖すら感じました
これが、まだ、そんな遠い昔でもなく、割と最近の60〜70年代の出来事であることに驚きます
そんな中でも7歳の女の子は1人で逞しく生きていきます

雑貨店の黒人の夫婦の優しさが心に沁みました
ただ、まだあの時代の黒人に、それほど強い力があるはずもなく、陰から応援する程度しかできません
それからあの弁護士さんも穏やかで、カイヤを救ってあげようとする心情が伝わってきて感動しました
多分あの3人がいなかったらカイヤは生きていられなかったんじゃないかな、そんな気がしました

これはキャスティングが素晴らしい
小説は読んでないので、原作のイメージは分からないですけど、カイヤを演じたデイジー・エドガー=ジョーンズさんは役柄にピッタリ、繊細で、でも湿地で1人で生きていく芯の強さも持っている
クズ男のチェイスを演じたハリス・ディキンソンさんも、性格の悪さが顔に滲み出ていて、本当に憎らしいなと思いました
そう思わせたってことは、素晴らしい演技だったんだと思います
もう1人の彼氏のテイラー・ジョン・スミスさんも適役でした

ミステリー要素はあまり強くないです
ストーリーもシンプル
舞台となった、ノースカロライナ州の湿地帯の自然や動植物が瑞々しくて、美しい
半分はこの湿地帯の美しさを堪能する映画なんだと思います

正直、オチは想像の範囲内でした
ただ、判決直後、間もなくネタバレするのかと思いきや、なんと老人になって、カイヤが亡くなってから、という演出には驚きました

死ぬ間際にカイヤはあれほど会いたかった母親に再会します
ジーンとしました
彼女は幸せな人生だったのだろうか、思いを馳せます