レオン

ザリガニの鳴くところのレオンのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.2
サスペンスよりも一人の女性の人生賛歌♪
久々にかなり感情移入してしまいました。
サスペンスと思っていたので、まさか序盤から目を潤ませられるとは・・・。

私は子供が過酷な環境にさらされる描写に弱い・・・。
裸足で登校するシーンで既に目頭が熱くなり、母が去り、「えっ・・」兄弟が去り、「うそっ・・」、父まで・・なのに幼いカイアは大人に助けを求めず、一人で生き抜くことを決断する。 そして健気に貝集め・・この時点でもう涙腺が・・。

(↓ややネタバレ含む)
街人には忌み嫌われるも、誰にも迷惑を掛けず生きようとする姿に感銘するも、
幸い成長したカイアに素敵なお相手が現れる。
彼のカイアへの接し方が素晴らしい。 いきなり知り合いになろうとはせず、陰から支えようとする行動に心打たれる。 そしてカイアの向学心も手伝って、本当に心通じ合える仲に。 

久々に見た、白人同士の美しいカップル! それは容姿だけでなく "人となり" としても素晴らしい二人。 (最近の白人・黒人,同性カップルの多さ=多様性の表現にうんざりだったのでより感じた)

キャスティングも素晴らしい。
原作者はこのカイアを表現出来る役者は見つからないのでは・・とメイキング映像で語っていたが、
デイジー・E・ジョーンズを一目見て、彼女以外にはカイヤ役はいない・と感じるぐらい気に入ったようだ。
純真さ+気強さも表現出来る彼女の目は、まさにドンピシャ! 

彼氏役のテイラー・ジョン・スミスもモデルの様なルックスだが目に優しさを表現出来る。 狡猾さを感じさせる2番目彼氏や、弁護士のデヴィッド・ストラザーン、売店の黒人ご夫婦、カイヤの子供時代など、皆登場するだけでその役柄の人格が分かるぐらいの絶妙キャスティングだ。

デート中の鳥の大群飛来や、古葉が舞うつむじ風などの描写がうまい。 冒頭も1羽の鳥の飛行が、CGなのか実写なのか(実写ならドローンでの撮影を失敗しながら何度も繰り返しているはず)分からないが美しいシーン。
端正に書き込まれた沢山の「画」等の小道具も、非常に丁寧に作られていて、映像の細部まで拘っている点にも感心する。

花火をバックに彼の帰還を待つシーンの台詞も、下手な言葉を添えるより、「No No No~」だけを繰り返す大人な演出がより心を揺さぶる。

オリビア・ニューマンという監督は初めて知ったが、そのセンスのよさにもかなりの才人と感じる。

私はそこそこ長い映画歴で、どんな作品も客観的には見れるが過去に2度、その主人公にとって、「ハッピーエンドでありますように・・」と視聴中願ってしまう事があった。 で今作もその状態に・・。 最後に何かある事を知っていたので、それが バッドエンド ではない事を祈った。

裁判結果に安堵するも、時の経過後、二人がかなりの歳になった容姿の描写まで続くことに驚き、「これがサプライズなのか・・」と思ったら、まさかの貝殻ペンダント・・。

確かにカイアは強く犯行を否定するコメントを発してない等の伏線はあったが・・。
私には必要ないエンディングシーンだった。
母親が投影された美しいシーンで終わってほしかった。

が、総じて魅力あるシーンが多く最近では最も心の針が振れた作品だった。 オススメ♪
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