ユウ

ザリガニの鳴くところのユウのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.5
湿地の娘とあだ名される女性の物語。あえてジャンル分けするなら法廷ものか。

田舎のマイナスの側面、すなわち相互監視社会と排他性、交通の問題が大きく切り出されており、演出の功もあり全体を通して寂しげで、漠然とした不安が横たわる作品となっている。
主人公のキャサリン(カイア)がその田舎である湿地を愛している事実が救いだが、同時にその地元愛こそがこの映画を悲劇的なものにしているストーリー的な核でもある。
そしてその寂しさを安直に泣かせる展開へと結びつけなかったことにより、この映画をなんとも形容しがたい独特でユニークなものに押し上げている。

かなり雰囲気重視な映画であり、ツッコミどころは結構多い。
中でも気になったのは6歳にして捨てられた幼女が(周囲の支えがあるとは言え)一人暮らしで生計を立て、理知的で立派な女性になるという序盤の展開については、正直いい言葉が見つからない。
そして大人になってから行政の福祉課が支援に乗り出すのも違和感がある。
さらに、町と湿地の距離感が物理的にも文化的にも明示されておらず、湿地という異物感を強調してはいるが同時に現実味も手放している。

ツッコミどころが多いとは書いたし、それは私の率直な意見だが、個人的に好きかと言われたらYES、そんな映画。
ユウ

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