このレビューはネタバレを含みます
<考察>
『偏見』と『強かさ』
この作品はオチを知った後で作品の見方が変わってくるタイプの作品だと思う。
その構造自体がテーマである『偏見』を内包している。
”狼と人間のハーフ”や”暗闇の中で目が光る”など街の人たちは彼女について勘違いしていたが、彼女の人生を見てきたはずの私たち視聴者も彼女を捉え違えていた。もちろん彼女は目が光らないし、狼でもない。しかし奥手でシャイな神秘的な女の子でもない。実際の彼女は自然から強かさを学びえた女性なのだ。
この勘違いが顕著に表れているシーンがある。殺人の起きる前日、彼女が雑貨屋の主人にバスの時刻表を聞き、チェイスのことを警察に言わないように頼むシーン。これは一見、彼女が社会に猜疑心を感じ怯えているシーンに見える。しかし結末から逆算すれば、チェイスの殺害の邪魔にならないように警察を排除しているのだとわかる。時刻表をつぶさに書き写しているのもおそらく計画のためだろう。
このように他者を完全に理解することは不可能に近い。しかしそれでも人には理解して欲しいという欲求が存在する。
殺人の証拠である”貝殻のペンダント”は、パートナーであるテイトに本当の自分を知って欲しくて敢えて取っておいたのではないだろうか。
”ザリガニの鳴くところところ”はこの世のどこにもない安静の場所、特に強さを獲得したのちの安寧だと思う。社会的な暴力に女性は晒されている。たとえ湿地の中で暮らしていようとも、この恐れはどこまでもついてくる(チェイスしてくる)。これを振り払うには女性は強さを獲得しなければならない。チェイスを殺し、彼女自身の手で”ザリガニが鳴くところ”を手にいれたように。
感想
ミステリーとしてはいささか弱かったかな。殺人の方法教えてくれんかったし。でも話としては良かった。最近よくある露骨なメタファー映画じゃなくて、ちゃんとした物語の裏にしっかりとしたテーマを感じることのできるいい映画だった。
この映画制作が女性中心だったらしいけど、やっぱ女の子ってこういう男好きよなーって思う。
強引でクズでちょっとガキっぽい感