みりお

ロストケアのみりおのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
5.0
受け取ったものが多すぎて、重たすぎて、自分が何を受け取ったのか、そして何を書き留めるべきか、全く頭の整理がつかない。
できれば1週間くらい頭の中に留め置いておきたいけれど、今日公開だから書かなきゃ💦
必死に絞り出して意味不明な文章になってるかもです…


ともかく、あらゆる人に観てほしい作品だった。
超高齢化社会における避けては通れない「介護」という問題を取り扱っているけれど、でもそれだけでは決して終わらない。
介護や認知症の先にある、人としての尊厳、生きる意味、そして家族の絆を描いた物語だった。
だから介護の渦中にいる方も、その足音を感じている方も、まだ自分には全く関係のないことと思っている方も、あらゆる人に観てほしい。
きっとすべての人の心に、何のフィルターも通さず一直線に語りかけてくる、そんな作品だった。

仕事も人生も犠牲にして認知症の親を介護することは並大抵ではないことで、その辛さは計り知れない。
けれど親にとっても子にとっても本当に辛いことは、愛する家族が目の前にいるのに、互いの存在を確かめ合えないことではないだろうか。
親に「誰ですか?」と言われ、日々激しい口調で罵られることは、心を何度も殺されること同然。
そして親自身も、頭の中にもやがかかり、自分が自分ではなくなり、何よりも愛おしい我が子すら誰だかわからなくなる感覚は、何回も死ぬのと同じくらい辛いのではないだろうか。

家族という絆があるが故に、喪われていく事実が何よりも辛くて、家族の絆を"呪縛"のようにさえ感じて…
決して介護が物理的に辛いから逃げ出したいだけではなく、老いや死に向き合う日々が、人が一人で背負うには重すぎるから、目を背けたくなるんだと思う。

お金のある人は、そんな親を介護施設に入れるのかもしれない。
または子供に心配をかけまいと、自ら介護施設に入る親もいるだろう。
そして金銭的問題から、もしくは親子の絆から、最期まで自分で面倒を見るという選択を取る人もいるだろう。
その重要なポイントが、いまの日本では全て自助努力になっているから、親子の絆を信じて一番勇気ある決断をした人が、地獄の底を這い回るような辛さを味わわなければいけないのかもしれない。
家族の絆を信じた人が、その絆を"呪縛"と呼んでしまうことがないように、日本の高齢化社会を変えていかなければいけない。
そんなメッセージをひしひしと感じた作品でした。

公開前夜祭の舞台挨拶付上映で、しかもなんとプレミアシートを引き当てたので、ほぼオールキャストの皆さんがすぐ背後を通ってくれたのは本当に感動🥹
(好きすぎて呼び捨てにしてる)まさみのお肌つやっつやだし、鈴鹿央士くんは顔ちっちゃ👀!
そして柄本明さん、演技してないとふっつーーーのおじいちゃん🤣💓
けれど後半の柄本明さんの演技は、もはや怪物のようでした。
「終盤の凄まじい演技は、なにかを参考にされたんですか?」と司会者に訊かれて、「う〜ん…もう1年前で覚えてないのよね〜僕たちは本を読めば帰れるからね、帰るために読んだだけ」とあっけらかんと答えていた柄本さんを観ていたからこそ、その直後に目にしたあの演技は、感嘆を通り越してもはや怖い。
もちろんあれだけの役者さんだから、感情を解きほぐし、演技準備されているのを見せないだけだと思うけど、それにしてもあの演技は、"帰るために本を読んだ"とはとても言えなくて、何かが乗り移ってるみたいだった。
その柄本さんの演技を皮切りに、後半はずっと嗚咽が止まらないような展開が続く。
終わった後は泣きすぎて頭痛かったし、鉛を飲み込んだように気持ちが重たくなる。
しかし本当に本当に本当に観てよかった作品でした。


【ストーリー】
ある民家で老人と介護士の死体が発見され、死亡した介護士と同じ訪問介護センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)が捜査線上に浮かぶ。
彼は献身的な介護士として利用者家族からの評判も良かったが、検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が勤める施設で老人の死亡率が異様に高いことに気付く。
そこで何が起きているのか、真相を明らかにすべく奔走する彼女に、斯波は老人たちを"殺した"のではなく"救った"のだと主張する。
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