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ロストケアのTinscowのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.8
介護問題や貧困家庭をテーマにした映画はここ数年でだいぶ増えてきている気がする。
少子高齢化が進むこの国の最も重い社会問題へと、確実になる警笛か。

ただ他の映画との違いは、介護される老人を殺す犯人が、家族を介護や困窮からの解放として正当化するも、サイコパスではないところ。
なので、サスペンス性はなく、あくまでヒューマンドラマ。その分リアル。

検事の大友・長澤まさみ、殺人犯の欺波・松山ケンイチ、そして柄本明の演技、それらを観るだけでも充分な作品。
大友(長澤まさみ)が検事として当然の論理を振りかざすが、次第にそれが揺らぐ。欺波(松山ケンイチ)の想いと背景を理解する、心情の変化。

解放するための救いとして、もちろん殺人が許されるわけではないけど、そんなの綺麗事にしか思えない。
だから、
「安全地帯にいるあなたには、穴から抜け出せないこちら側はわからない」
「迷惑はかけないと生きていけない、だからお互い迷惑かけよう」
こんな台詞が突き刺さる。

これ鑑賞した人の大半は、自分もしくは身近な人に置き換えて観るんじゃないかな。
親、自分、家族の居ない知人など、将来を考えさせられる。
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