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ロストケアのmitzのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
2.0
「社会の穴」を描いた社会派ドラマ。
介護士として42人を殺害した連続殺人犯と検察官の物語。父親の介護の末に社会に絶望し、救済と信じて老人たちを殺める行為の是非がテーマです。
正論を振りかざす検察官(長澤まさみ)に対して、極論でありながらも介護者 斯波宗典(松山ケンイチ)の半生を描くことで観る側の善悪の天秤を揺さぶってきます。そして事実として高齢化が進むこの国の問題提起として成立している作品です。
ただしテーマに対してストーリーそのものが凡庸です。殺人犯が働いていた介護センターが事件後も通常営業していること。斯波を慕っていた後輩職員がすぐに風俗嬢へ闇落ちすること。そして何よりラストシーンとなる主役2人の対話が余りに不自然なこと、など重厚なテーマを扱いながら「ん?」と思うことが多く、社会派でありながらその純度が低く、バランスを崩したまま気付けば森山直太朗の美しい歌声が流れていました。
唯一印象的だったのは、被害者家族であり捜査上では斯波を擁護していた中年女性(戸田菜穂)が裁判所で声を荒げ罵声を浴びせる人間の醜さにリアリティを感じました。
コマーシャルを観ただけでそれ以上何もない作品です。
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