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ロストケアのクリームのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
4.1
凄くキツイ内容ですが、良かったです。第三者が、尊厳死の手伝いをする事は犯罪だし、あってはならない事なのですが、気持ちの部分では、主人公の思いも解る。同時に倫理的なモノや法律も解っているので、その狭間で揺さぶられる。ラストの演出で優しさを残していて、そこが凄く好きでした。高齢化社会、こう言う問題提起は沢山して、より良い未来になって行ったら良いのにと思います。

ケアセンター長の団は、合い鍵を使い、多数の老人の家から窃盗を繰り返していた。団はその日、梅田さんの家に入り、盗みを働いた。同ケアセンターの介護士·斯波も梅田さんの様子が心配で訪問した為、2人は鉢合わせ、もみ合いになり、団が階段から落ちて死亡した。梅田さんも亡くなっていた。そして、梅田さんの体内からニコチンが検出され、斯波が疑われるのだった。



ネタバレ↓



同ケアセンターでは、梅田さんを含めた41人が亡くなっていた。検事の大友が斯波を問い詰めると自分がした事は殺人ではなく、救いだと主張。 喪失の介護であり、ロストケアだと言うのだ。自分は、救ったのだと…。
斯波は自分の父を含む42人を殺していた。
脳梗塞で倒れた父の面倒を見ながらのギリギリの生活。父は認知症も患い、脳梗塞の後遺症も酷くなった。生活保護も断られ、途方に暮れる斯波に父は、自分を殺して欲しいと言う。宗典の事を覚えているうちに死にたいと懇願する。1週間後、父をニコチン注射で殺した(フィクションです)。枕の下からは、折り鶴が出て来て来ました。
警察は父の死因を心不全と断定した。
3年後、介護士になった斯波は、自分と父と同じような人を見るたび、救いたいと思い老人をニコチン注射で殺害して来たのだ。
裁判の後に、斯波の元を訪れた大友は、自分の父の話をします。大友の父は独居老人で亡くなっていた。亡くなる3か月前に電話やメールが沢山あったが、長年会っていなかった彼女は無視をした。 そのせいで父は亡くなった。私が父を殺しました。と話すのだった。
ラストは、斯波が父の折り鶴の中の手紙を読むシーンで終わります。内容は「むねのり、おまえといられてしあわせだった。おれのところにうまれてきてくれありがとう」 とガタガタの文字で書かれていた。ここで2人の絆を描いてくれるのは優しいなと思いました。
エンドロールは幼い斯波の幸せそうなホームビデオが流れます。

私は、認知症が始まっていた父を亡くしているので、斯波の父への気持ちの部分だけは理解出来ました。勿論、犯罪なので駄目だけど、介護する側もされる側もあの親子の気持ちになる事はあると思います。
本当に松山ケンイチさんと柄本明さんの介護の壮絶なシーンは圧巻でした。だから、響いた。
また、大友の父の孤独死の現場もリアリティがありました。死後2ヵ月経ったベッドに人形の黒いシミが残っていて、その描写がずっと心に残りました。
色んな描写に妙なリアリティがあり、心を抉られますが、良い映画だと思います。
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