斯波は言う「私は41人を救った」その意味は「認知症の親の介護に苦悩する子を助けた」ということなのだろう。
では私も言う「斯波よ、それではお前は自分を助ける為に親を殺したのか?!」と。
介護疲れから親の命を断つニュースは時々報じられる。その場合、たいていは子も自分の命を断とうとする。自分がいなくなった後の親を憂うからだ。
自分を助ける為に親を殺める子はいない。断じていない。もしいたとしたらそれはただの殺人だ。多数の人を殺めたのならば嗜虐殺人だ。
この映画が徹頭徹尾、リアルを欠いた原因は、脚本が世間の耳目を集めたいだけの陳腐なストーリーに終始したからだ。結局、最後は「こんな社会が悪い」でまとめる。実にくだらない。
映画のテーマが山ゆり事件に似ていると言われているらしい。しかし全く違う。山ゆり事件の場合は人間の悪意が現実となった、心底恐怖を感じる事件だった。
もし映画で何かを伝えようとするならばもっと真剣に現実に向き合った方がいい。
現実が如何に悪意に満ちていたとしても、人はなんとか生きていかなければならないのだ。