シシオリシンシ

映画刀剣乱舞-黎明-のシシオリシンシのレビュー・感想・評価

映画刀剣乱舞-黎明-(2023年製作の映画)
3.4
一言で言うなら「平成ライダーの春映画」。
大味な脚本やメタ展開、大きく広げた風呂敷を力業で回収するストーリーなど、今や懐かしさを感じるオールライダー系の春映画を思い起こさせる映画だった。つまり完成度は高くないということだ。

主な舞台は2012年。現代に現れた刀剣男士が時代のギャップに戸惑う絵面や抹茶ラテマキアートを嗜む三日月やギャル審神者に振り回される長谷部などのキャラ萌え描写は要素として面白かったが、この映画全体に波及するほどの魅力とは言えない。

現代で三日月の仮の主となる琴音がもう一人の主人公という位置になるのだが、役柄としても演者としても魅力をあまり感じられなかったのはマイナスポイント。相方の三日月を食うくらいの存在感やキャラパワーが欲しかったところ。

あとは全体的にテンポが悪い。キャラに説明させるシーンが多かったり、シーンの見せ方では同じようなシーンを延々繰り返して時間を食ってたりと見ていて無駄を感じられる編集が目立つ。
琴音が酒呑童子を説得するシーンがどうにも野暮ったく感じられ、感情にうったえるより先に段取り感を感じてしまった。

と、語りだすと欠点ばかりが先んじてしまうのも事実だが、大味には大味の良さがあるのもまた事実。

クライマックスの半ば強引に刀剣男士たちが顕現し大勢で大立ち回りを演じる様はまさにオールライダー春映画!
こまけえこたぁいいんだよ!と言わんばかりの大盤振る舞いには素直に乗せられるのがこの映画の楽しみ方なのだ。

サブタイトルの『黎明』の意味も、2012年という歴史の特異点において、誰もが審神者になる可能性を提示したことに由来する。これは実際の審神者(プレイヤー)に対してのメタ的なラブレターのような意味もあり、力業ではあるにしても真摯にゲームファンへの愛を伝えた実写化であると言えるだろう。

前作のような映画として完成度の高い作品とは言えないが、楽しみ方を心得ればこれはこれで良いモノと捉えられる映画でもあるため、観賞を迷われている方には是非ともご覧いただきたい"物語"だ。
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