むらむら

劇場版 おうちでキャノンボール2020のむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
注:今回の感想、倫理的にどうなの?って内容もあるので、「AV女優」を「セクシー女優」と書かないと怒り出すような人は読まないでください。

コロナ禍始まったばかりの2020年5月、「完全リモート、ソーシャルディスタンス 1.8m確保」という条件下で行われた「テレクラキャノンボール(通称テレキャノ)」の記録。

1.テレキャノについて

「テレクラキャノンボール」を知らない人、もしくは知らないふりをしている人にお伝えすると、テレキャノはカンパニー松尾監督によるAVシリーズ。選びぬかれたAV監督や男優が、持てる能力を駆使して、制限時間内に女性(※ここポイント)をナンパし、カメラの前で色んなことをやってもらって、内容に応じてポイントを獲得、優勝を争う。

なかには糞喰い(※エルデンリングのキャラ名ではありません)なんて描写もあり、やってることはかなりエグいのだが、カンパニー松尾の絶妙な編集と、出走者たちの濃いキャラでカルト的人気に。

2014年には、劇場向けにエロ少なめに編集した作品を「劇場版 テレクラキャノンボール2013」として劇場公開。ロングランとなった。

そして時は2020ーー。

もともとオリンピックと掛けて、テレキャノを撮る構想があったのだが、コロナ禍で世の中はロックダウン。AV撮影自体も数ヶ月止まるという先の見えない状況の中、松尾監督が企画したのが、この、なかなかハードルの高い「おうちでキャノンボール」という企画だ。

準備から撮影まで、各出走者は一度も会わないまま準備は進行。なので、作品はほぼ全て、「search/サーチ」みたいに、PCおよびスマホの画面上で進行する。

2.今回の登場人物

今回出走するのは5名。いずれも、一部のAVマニア(俺)からは知られる曲者ぞろいだ。

カンパニー松尾:監督兼出走。これまで優勝経験なし。ハメ撮り界の巨匠として一部(俺の脳内)で有名。余談だが、フジロックで俺がNew Order観てると、毎回カンパニー松尾を見かけてた。

バクシーシ山下:かつて人権団体から火炙りに合いそうな特殊AVを量産していたAV監督。最近作に「実録 妖怪ドキュメント 河童伝説」 

梁井一:カンパニー松尾の所属する制作会社の社員監督

嵐山みちる:イケメンAV監督、前作では多忙を理由に途中脱落。知力に全ステを振ったような策士

男優黒田:初参戦。ニューハーフも行けるマッチョな脳筋ビルド。森林原人と仲良し(←豆知識)

これに平澤プロデューサーがジャッジとして加わる。

出走者のラインナップを見ても分かるように、俺呼んで

「特殊AV界のアヴェンジャーズ」

これは俺的に期待せざるを得ない。

3.ルールと進行

撮影は二日間、主に3つのパートで成立している。

一番勝負:早食い
二番勝負:オンラインナンパ
三番勝負:アポ取り後、リアルに会ってからのソーシャルディスタンスエロ

で構成される。ちなみに、一番勝負は、全くエロ関係ない単なる早食い。

二番勝負、三番勝負に関しては、オンラインでナンパした女の子(※後述)が「顔出し」「オナニー」「おしっこ」などの規定競技をこなせばこなすほど、技術点が加算される仕組みになってる。

まぁこの辺のルール、理解してなくても全く問題ない。

それより、今回、LGBTの時節柄なのか、「見た目が女の子」だったら何でも良い、とルールが若干緩和されることに。俺的には全く嬉しくないが、実はこのルールがあとあと効いてくるとは思わなかった。

4.実際の内容

※ここからは内容をボカして書いてますが、一般の人からは受け入れられないような描写もあります。なので、「白雪姫」と聞いてディズニーではなく豪雪地帯・富山のピンサロが思い浮かぶような人だけ先にお進みください。

結論から言うと「めちゃくちゃ面白かった」!

女の子を巡る男たちの悲喜こもごも、女の子たちの言葉から垣間見える現代のリアル、そしてコロナ禍の東京の風景。俺がテレキャノに求める全てが110分の中に凝縮されてる。

女の子と出会ってから別れるまで、「1.8mというソーシャルディスタンス」を徹頭徹尾、守って、エロを追求する出走者たち。

顔出しNGの女の子には、カメラを向ける直前にサングラスを放り投げる(1.8mを保つために)。

コロナ禍の新宿。誰も歩いていない中、ソーシャルディスタンスを保ってホテルに向かう。誰もいないので、区役所通りのど真ん中で撮影しても怒られない。

俺も新宿(この作品でやたら出てきた東新宿)住んでるから、この時期の新宿の異様なくらいの静かな空気感が伝わってきた。

出走者は、さすが歴戦のツワモノばかりで、ものすごくアクロバティックな設定なのに、不可能を可能にするかのごとくアイデアを振り絞って課題に挑戦。

中でも、脳筋ビルドで初参戦な男優黒田のパート。やらせなんじゃないかってくらい、次から次に変な子がひっかかってくる。詳述は避けるが、タモリみたいな子、「いつもは『おしおき部屋』で男を漁ってます」という子、どれも魅力的だった。

前代未聞の高枝切り鋏の使い方、前代未聞の顔射。コロナがこれほどまでに男優黒田のクリエイティブを刺激するなんて!

そして、戦利品のウンコ(ポイント+1)をタッパに入れて持って帰ってくる男優黒田、マメすぎて男らしい。

イケメンみちるとカンパニー松尾のネットリテラシーの差も凄い。これまた詳述は避けるが、ツイッ○ーやティ○ダーを駆使しようとするも、「ハメ撮り歴33年」の昭和な美学から抜け出せないカンパニー松尾と、的確にトレンドを読み、巧みな書き込みとプロフで女の子を飄々と網にかけていくイケメンみちるのギャップ。いやはや、イケメンみちるはマーケティング講座開いても繁盛するんじゃないかとすら思えた。加えて、みちるの撮影技術が凄すぎて、これまで観たことのない画角を発明してるのも凄い。

コロナ禍のダメージが大きいのか、機動力を発揮できないのがバクシーシ山下。寝たらマイナスポイント、って言われてるのに寝てる。だが、的確なツッコミとボケは健在で、今回の影の功労者。

女の子たちも負けてはいない。風俗の子や就職活動中の子、さらにはニューハーフ。それぞれのコロナ禍での変化や本音が、インタビューの端々から伝わってきたり伝わってこなかったりする。

顔出しNGなのにウンコは出来る女の子、四国まで遠征するソープ嬢、撮影したものの「やっぱり絶対使って欲しくない」と心変わりする子。そして実家での撮影を敢行する子。どのエピソードも、この状況だからこそ撮れたようにしか思えない濃さ。

そして訪れるクライマックス。これまた詳しく掛けなくて申し訳ないが、ロウソクが出てくるあるシーンには奇跡を感じた。ドキュメンタリーだからこそ撮れる「絶対に頭で考えてたら出てこない」感動がそこにあった……気がする。ステイホームでも、テレキャノの奇跡は健在だった。

色々とコロナ禍を反映した作品を観てきたが、リアルという意味では圧倒的かもしれない。

5.まとめ

というわけで、ほぼ、オッサンたちの井戸端会議と独創的なエロ表現で構成されるこの作品、残念ながら新宿K’sシネマの客数はまばらだったものの、爆笑の渦が何度も起こっていた。

新宿ケイズシネマでは5/6(金)までのレイトショー上映なので、ここまで読んでくれた方で、思いっきり映画館で笑いたい、そして多少の倫理的瑕疵は気にしない、って方には文句なくオススメする。

バカバカしいことかもしれないが、俺はこの作品から、圧倒的なロマンを感じる。方向性は全く間違っているかもしれないが、何かに真剣に打ち込むことは、とっても美しい。

出走者の皆さんと、出てくれた子たちに感謝します。

(おしまい)
むらむら

むらむら