WKW 4Kレストア版5作品上映がようやく我が街にもやってきた。
『恋する惑星 4K』（原題:重慶森林）
最前列ど真ん中で鑑賞。
自身オールタイムベストのひとつ。
例の如く毎度スミマセンの自分語り...
大学時代に一時アジア中心のバックパッカーをしていて（当然留年した）香港をハブ空港にしていたので都合3ヶ月は滞在し、重慶大厦（チョンキンマンション）のビルの中にあるゲストハウスにも何度か宿泊している。
1F入り口からインドの香辛料が漂い、数台ある壊れそうなエレベーターはそれぞれが別々のルートのため、間違えたら目的地には絶対に辿り着けない。フロアー自体も迷路のようで、火事にでもなればまず助からない構造。部屋は日本の留置所の方が快適だろう。
あの映像はまさにそのまんまで匂いまで漂ってきそうな感覚に陥る。（前半シーンは特にそうだ）
前半シーンは九龍、後半シーンは香港島とメインロケーション自体も分かれている。
（二つの物語の接点となる場所は香港島の蘭桂坊）
この映画が日本でここまでヒットしたのは金城武さんももちろんだけどフェイ・ウォンの圧倒的な魅力と世界一白いブリーフが似合うトニー・レオンの存在感とひたすら洒落おつな映像と音楽（ラストシーンの台詞からの「夢中人」のイントロ〜なんて何度聴いたことか）だとは思う。
だけど自分は画面から感じとれる匂いと湿度に完全にやられてしまった。
洗練される前のランカイフォン
今も健在である尖沙咀のマクドナルド
コンビニに変わってしまった『深夜特急』
閉鎖されてしまった『カリフォルニア』
中環の『ミッドレベルエスカレーター』
世界一着陸が難しかった『啓徳空港』
今回20数年振りに大スクリーンで観て胸の奥がチクチクと苦しくなった。でもラストで幸せな気分に戻れたよ。
前半の缶詰の賞味期限って香港返還のことも重ねているのだとわかったのはDVDで観返してからだった。フォロアーさんのご指摘で後半の飛行機は「返還期限までに香港を離れようか？」という当時の香港の人たちの心情も重ねて表現しているとも言える。それほど香港市民にとってはセンシティブな問題。
想定以上に早く大陸に飲み込まれようとしている昨今、あの頃の宝石が散りばめられた映像のような景色はもう2度と見ることが出来ないのかもしれない。
