元々『恋する惑星』の一部として描かれるはずだったらしいけど、分けて正解だと思った。『恋する惑星』と一緒にしてたらフェイ・ウォンのチャーミングさに覆われて、この金城武のチャーミングさが霞んでしまっていたと思う。名優って声がなくてもこんなに豊かに存在感を醸せるんですね。というかウォン・カーウァイはなんでこんなにおじさんを可愛らしく撮るのが上手なんだ。
『恋する惑星』と立て続けに観て感じたことは、他人は代替可能な存在だし、人は人のことを忘れるし、人は人に忘れ去られる。そうやって傷を付けたり傷を負ったりを繰り返し、空っぽの身体になってようやく唯一無二の自分と向き合えるようになるということ。
私は多分この話の結末を忘れると思う。何か好きな映画だったなという印象だけがそこに残り、何が起きたかは忘れる。都市は、香港は、東京もきっとそんな街で、きっと何年後かに私もこの街で何が起きたか思い出せなくなるけれど、何か好きだったなということだけは覚えていたい。この映画みたいに。
