ウォン・カーウァイの描いてるものはシンプルである。
一見複雑な内容に思われるが、今回の作品は家族愛、ひいては孤独を描いていた。
一連の作品に見られる特徴としては「痕跡」であろう。
人は一緒にいるときよりも、その人の痕跡にその人を感じ、いない時に恋するものなのだ。 ウォン・カーウァイはそれをよく知っている。
そしてこの作品の世界観を作るのがウォン・カーウァイの絵作りである。元々グラフィックデザインを専攻していたカーウォイならでは色味である。
またこの作品は脚本が存在せず、メモによる即興劇の連続であるがゆえにカメラワークも綺麗とは言い難い。しかしその手持ちカメラ感が躍動感を与え、即興のリアル感を裏打ちしている。
ただ脚本がないために作品が散乱的な殴り書きである所は反省点であろう。
(それも味と言われたらおしまいだが)
今回得たことは善は暴力から。悲しみは笑いからということであろうか。