「欲望の翼」、「恋する惑星」ともに「お洒落なだけ」と辛口レビューで★2点台をつけてしまうほど、かなり苦手なタイプの作品だった故に、相当な苦手意識を持ってしまったウォン・カーヴァイ作品。今回、この作品を観て合わなかったら、もうこの監督の作品を観ることはないだろう、という覚悟を持って鑑賞しましたが、本作はお洒落さはありつつも、分かりやすい設定と筋の通ったストーリーもあり、なかなか楽しめました。
偶然同じ日に引っ越してきた隣同士の夫婦の大人の複雑な恋愛事情を描く本作。“大人の恋愛事情”と書くと聞こえはいいですが、要するにW不倫物。設定そのものや展開は目立ってユニークな内容はないものの、“雰囲気ありき”に見えてしまった先の2作品に比べストーリー性は高く、ウォン・カーヴァイのお洒落さも健在で、最後まで飽きずに集中して観ることができました。
しかし、男女関係、特に既婚者の“一線を越える”とは一体何なのか？体の関係がなければ、いくらお互いが感情を高め合っていても良いのか？U-NEXTの本作解説文に書かれている「大人の純愛を描いたラブストーリー」という表現はいまいちピンと来なかったです。
この主人公たちの「自分たちは被害者」という意識と「体の関係が無ければ悪いことはしていない」とお互いに言い聞かせる自己擁護感。裏を返せば、本人たちも内心は「悪いことしてるのはお互い重々分かってるよね」と認め合っているわけで、それを敢えて言葉にせず続ける関係こそが“大人の純愛”なのでしょうかね。
