ルサチマ

飛鳥を造るのルサチマのレビュー・感想・評価

飛鳥を造る(1976年製作の映画)
4.5
三重塔の再建に挑む労働者たちの眼差しは現在進行形でのハリボテの様子を捉える訳ではなく、既に完成形を見つめているのだとするならば、映画が建築作業に勤める労働者たちを捉える時、カメラは労働者たちの見つめる未来から常に遅れをとるだろう。そのとき松川が圧倒的なフィクションの視点として、カメラを導入しラストの記念撮影を過去のものとして提示したことの意味の奥深さが競り上がってくる。建設中、労働者たちを捉えたカメラはあくまで過去のものとして提示することに留めつつ、音を獲得した映画のナレーションによって未来からの語りを堂々と響かせてしまう。劇映画ではないかもしれないが、これは明らかなフィクションの映画として認識される懐の広さを兼ね備えた作品ではないか。

映像に映る幸田文を初めて見れたことも一文学青年として大変嬉しい。
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