木蘭

母へ捧げる僕たちのアリアの木蘭のレビュー・感想・評価

母へ捧げる僕たちのアリア(2021年製作の映画)
2.9
 原題は『兄貴たちと俺』で、南仏の公営団地に暮らす移民を親に持つ四兄弟の一夏の物語。

 監督自身が演出・出演し、共同制作もした舞台劇をベースにした作品で、四兄弟それぞれの物語を描いた戯曲の(末弟を主人公にすえた)一幕を、監督自身の思い出も加味して映画化したという。

 昏睡状態の母親を抱えて困窮し、父親代わりになりきれない長男、観光客相手にいかがわしい仕事に精を出す次男と三男、家族としても個人としても問題を抱え込み、時に罵り殴り合いながらも切れない絆で結ばれた家族を14歳の四男の視点で活写しながら、彼自身が歌う事の喜びに目覚める物語を描く・・・。

 俳優は皆素晴らしく瑞々しい演技を見せてくれるが、特に長男を演じるダリ・ベンサーラのふとした表情は素晴らしい。

 因みに、歌唱教室の講師サラ役のジュディット・シュムラ(当時の監督のパートナー)は歌手でもあり、劇中の歌声は吹き替えではないとの事。
 彼女の教えるシーンに、音楽教育のメソッド、芸術と人生の関わり方の欧州と日本との差違を感じ、色々と考えさせられた。


 ・・・などと誉めておきながら星の数が少ないのは、光る素材を上手くまとめ切れていないから。
 物語は分岐し、焦点はあちこちに散らばるので、集中して観ていられない。もっと編集で素材を取捨選択し、物語の主軸を明確にしてメリハリもつけてくれれば・・・と思わせてしまう所に、長編第一作に思いが先走る監督の未熟さを感じてしまった。

 それと・・・安定した画面を作りたいからハンディカムとかは使わなかった・・・と監督は言うのだが、やたらと画面がぶれまくるのはカメラマンが下手だからか?
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