ベビーパウダー山崎

太陽を抱く女のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

太陽を抱く女(1964年製作の映画)
4.0
その一族のお手伝いとして雇われた純粋無垢な少女が巻き起こす騒動というより、彼女が天使の役割で無自覚にそれぞれの男女の仲を取り持っていく崩壊ではなく家族が家族であるための再生としての『テオレマ』。あちこちで火花が散って、その火種を絶やすためにやけに顔色が悪い佐野周二(父)が動き回っての大団円。成瀬の家族ものみたいにしがらみや理不尽さで映画を進めず、愛と関係性のみの幸福な群像劇。それは大衆のための映画でしかないのだけど、ここまで手際よく捌き、ひとつひとつのピースがガッチリはまると物語を越えてくる凄みがある。娯楽としてここまで徹するのかと感心さえする。廊下の端からのキャメラで皆がバタバタしながらのラストカット。こういった生活(人生)の続きを匂わして終わる映画が好きです。見ておいた方が良い日本映画の一本。