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太陽を抱く女のakrutmのレビュー・感想・評価

太陽を抱く女(1964年製作の映画)
3.7
綺麗で有能な女性がお手伝いさんとしてやって来た大家族を舞台に、彼女をちやほやする男性たちとそれに嫉妬する女性たちが巻き起こす様々な騒動をコメディタッチで描いた、番匠義彰監督のホームドラマ映画。松竹大船調の下町喜劇を得意とする番匠義彰監督らしい一品。娯楽映画としての質は高い。

ヒロインのお手伝いさんを演じるのは、真理明美というあまり知られていない(少なくても私は知らなかった)若手女優。整った顔立ちにスタイルの良さは、確かにヒロインとして素質はありそう。大家族の長男が勤めている会社の生CMモデルを代理で行うシーンなどは、その素質が発揮されている。でも残念ながら、演技があまり上手くなく、その結果として、スターとして華が感じられない。オーディションでヒロインに選ばれて主演した『モンローのような女』に続く主演二作目であるが、前作が期待はずれだったらしく、本作で挽回を試みたというところか。

ストーリー的には、彼女が来たことで結果的に家族全員に幸福をもたらす「太陽」という意味で間違いなく主人公なのであるが、彼女の視点でのシーンは一切ない。あくまでも脇役のような存在なのである。これは私の想像であるが、当初は主人公の視点からストーリーを進めようとしたが、演技力不足でこうせざるを得なかったのでないか。もしかすると、お手伝いという受け身の設定自体がそのためなのかもしれない。結局、真理明美がこれ以降輝くことはなく、映画界からは消えていったようである。その後、彼女の代表作となるのがTVドラマの『プレイガール』である。

その分、他の出演者はなかなか豪華である。一家の主を演じる佐野周二の存在感が抜群。彼がいることによって、映画全体が締まっている。久保菜穂子、三ツ矢歌子、清水まゆみなどの女性陣も安定している。若い頃の小坂一也、杉浦直樹、菅原文太などは、どこかイマイチ。彼らはもっと歳を重ねてからのほうが良い。特に、売れてからの役柄イメージとは正反対の情けない役の菅原文太を見れるのは貴重かも。
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