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長ぐつをはいたネコと9つの命のtakatoのレビュー・感想・評価

4.4
 海外で先に公開されて評価が高かって見てみたのですが大正解でした!。ピクサーなんかの大傑作ほどではないですが、とにかく楽しいエンタメ作品として大満足。本当にみんな今はこれ見なきゃ勿体ないよ!な傑作。


 ありがちなストーリー、よく見るようなキャラ、使い古されたテーマ、と斬新だったりアーティーだったりするところは本作にはまずありません。正直落話がち着くところも察しのいい方なら途中でわかります。しかし、終盤になるとアレ?自然となんか頬を濡らしているもんが…。ありふれたもんを如何に上手く語るか?それこそエンタメの醍醐味であり、ベタを王道に輝かせる錬金術の素晴らしさを見ました。


 エンタメの基本は3つの擬音で表現できると思います。ワクワク(アクションとサスペンス)、ニヤニヤ(ギャグと恋愛)、サメザメ(テーマ性と感動)。この3つが本作はちゃんと揃っている。


 本作はワクワクと楽しさが最初の掴みのアクションから炸裂している。CGバトルは下手するとカメラをやたらグワングワン動かすばかりで、普通にやれよ!ってツッコミ入れたくなる時もありますが本作はなんせ主役が猫!。その小さな体をアクロバティックに駆使するアクションが実に上手くできている。


 映像も素晴らしく、特にツダケンさん演じるめちゃ格好いい「死神」な狼さん周りはみんな良い!。特にクライマックスの対決は本当に久々に格好良さに痺れました。その前のレオーネばりのメキシカン・スタンドオフなシーンも笑わせてもらいました。「スパイダーバース」的に絵が動いてるようなスタイルになるのも素晴らしい。


 キャラに関してはよくあるパターンよくある配置です。ただ、みんな濃ゆいし、短い尺でテンポよくドンドン進むのにしっかりキャラクターが好きになるように語りが巧みだから妙に変わったことしようとしてるのより遥かにスムーズに乗れるのがグッド!。キモいデブな悪役で、おとぎの世界の道具を駆使するジャック・ホーナーのキャラは深掘りが足らないとは言わないが、もっと色々やれそうな奴だったからもうちょっと見たかったかもだけど。吹き替えも全般的に良かったと思います。


 そして中心のテーマ。最初に「残り一つの命」、「願いが一つだけ叶う」って設定の時点で「あ、察し…」なところですが、結局面白いかどうかは読めるかどうか?なんて話じゃないのです。それを如何に語るかにかかっている。本作を見ていて思ったのは世界最高峰の色男にして、強運と運命が味方した男、その名もカサノバの後半生の話でした。


 有名な自伝で楽しいやりまくりな人生を書き連ねたカサノバだが、そんな人生がずっと上手くいくはずもなく「若さ」という最大の武器を失った時、彼のヒーローだった時代は終わりを告げた。その後は書かれなかった惨めで哀れな後半生が実際はズルズルと続いて誰にも顧みられない最期が待っていた。


 本作の「長靴をはいた猫」ことプスも残機が無数にあった頃は無鉄砲にヒーローとして大暴れしていたが、いざ本当の死が迫ってくると急に臆病になってしまって過去を悔い初めてなにもかもから逃げ出してしまう。ヒーローといえば聞こえはいいが、自分だけを可愛がって本当は孤独で、大切なモノを引き受けて真剣に生きる勇気も覚悟も持ってなかった。つまり本作は「レゴバットマン」とかにも通ずる、子供大人が本当の意味で大人になる、今この瞬間の大切さを痛感するというのがテーマなのです。


 これは正直割と見かけるテーマではあります。「一つの願い」の方も「ああ、そうだろうな」って展開です。ですが、単に言葉で表現すると陳腐なモノが物語として巧みに語られると心にガツン!とくるということこそ物語の真価だと私は思います。めでたしめでたしで去っていく彼等の後ろ姿に思わず涙が…。本作は楽しいエンターテイメントと、シンプルだがだからこそ心に刺さるメッセージが両立したドリームワークスの新たな傑作として推すに充分な作品なので是非御覧ください。
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