エス

マルセル 靴をはいた小さな貝のエスのレビュー・感想・評価

5.0
心がずーっとじーんと温かさに包まれている。忘れたくない最も勇敢なたった2.5センチの貝の実写とストップモーションでつくられたモキュメンタリー。

舞台はあるAirbnbで貸し出されている恋人たちが出ていった空っぽのおうち、そこに住むはスニーカーを履いた小さな貝、おしゃべりで正直者で好奇心旺盛なマルセル。ある日から20人いた家族が消えてしまい、おばあちゃんと二人きりに。たまたま部屋を借りた映像クリエイターが普段気付かれることの無いマルセルと出逢い、知ることのなかった外の世界を知り、離れ離れの家族を探し始めるというお話。

沢山の命が芽吹き暮らす、このとてつもなく大きい世界は、時に生き辛く、時に有り得ないほど美しい。そこで生まれた絆も同じようにかけがいのないもので。本当に素朴で身近で、マルセルも不器用ながらも大切な存在を守るべく、そして自分も楽しむべく一生懸命に生きている。自分が生きている現実に切実に密接しているからこそ、愛おしさが溢れ出し、幸せでいて欲しいと願う。一時間半でここまでやさしく温かな物語を語り切ったのが本当に素晴らしいなと思った。心が浄化されたような感じ。真のお気に入りをみつけました。

大好きなモキュメンタリーやA24配給、ジェニースレイト主演など好きなところは沢山あれど、個人的に良かったのが生きてく上で繋がりは必要だけど、人が多すぎる環境の中では圧倒され疲れてしまい、ひとりの時間も大切だと主張してくれたのが今まで見たどの作品よりも共感できて、存在を肯定して貰えた気がして本当に嬉しかった。

新しい出逢いと別れ、喜びと失望がごちゃまぜのこの世界で、迷子になってしまったら、また何度でもマルセルに逢いに行こうと思う。
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