段ボール箱

マルセル 靴をはいた小さな貝の段ボール箱のレビュー・感想・評価

4.5
元々ショートムービーだったものを映画の長編尺で撮り直した、モキュメンタリー風の作品。
ストップモーションと実写を組み合わせて、わたしたちの家にもいるかもしれない小さな存在たちの生活を描く目線が本当に愛おしい。

小さな貝のマルセルが、とある事情で行方知れずとなった家族を探す様子をSNSに配信することになるところから物語がはじまる。SNS(動画配信)の醜い部分と、力がなくとも誰でも配信できるからこその強みがどちらも描かれている。

まず家に住む貝って何?から入るけれど、よく見るとカタツムリというわけでもなく目がついてる位置とかもなんか変。だけど彼は祖母と2人で彼らなりに堅実に生きていて、失った家族を取り戻したいと思っている。その姿がもう本当に愛おしい。
配信を手伝ってくれる人(この借家の住人、人間)もある理由で家族を失っている。それでも人間は1人でお金を稼いで生きていけるけれど、マルセルはあまりに小さく、自分たちだけで食べ物からすみかまで工夫して得るしかない。彼が失ったのは家族というだけに留まらず彼の世界を構築する共同体そのものだ。
虫が嫌いだというマルセルにおばあちゃんがかけてくれる言葉が良い。この世界の虫たちはマルセル達と違って言葉を話すことはしないけれど、序盤から実は身近な隣人であり続け、家族を探す過程でいつの間にかより近しい存在になっている。

ストップモーションもこの小さな存在たちをまなざす世界観も好きすぎて、ずっと見ていたい気持ちになった。