けんたろう

家庭 4Kデジタルリマスター版のけんたろうのレビュー・感想・評価

-
胡散臭すぎる日本人。


いやあ面白い!

先づ、第一に、可笑しくて堪らない! 妻とのすれ違ひ、就職時の取り違ひ、全く通じてゐない会話、異文化との下手糞なる交流、然うして金を借りてばかりの友人や、時間と戦ふ夫婦などの繰り返し。もう、笑へて笑へて仕様が無い。ユウモアたつぷりである。
隣人たちとの遣り取りや、エセ日本描写も亦た愉快で、何度もニヤけてしまうた。

又た、「去年マリエンバートで」や「勝手にしやがれ」、ユロおじさん、ジヨン・フオドの登場も、頗る楽しい。陳腐な表現で相すまぬが、謂はゆる映画愛といふやつを強く感じた。
映画が観たくなる映画、とでも云へようか。とかく、本当に素敵な作品である。

其れから、彼の奇妙なる劇伴も面白い。やけに耳に残る。
成るほど、余んまり映画に合うてゐないやうな気もしなくはない。然し映画の魔力なんかしら、何故か好いてしまふ。

極めつけは、「妻に成りたかつたわ」の切なき台詞に心奪はれた私しを丸で嘲笑ふかの如く、思はぬ伏線を回収して綺麗に収まる最後である。最早や痛快の一言にく。
家庭を出ずして家庭を守れずとか何んとかいふ、風俗店での言ひ訳には笑うてしまうたが、然し此の台詞は、案外本作をよく云ひ表してゐるのかも知れない。少なくとも、然う感ぜらるゝ最後には、此れ亦た大へん笑うてしまうた。

面白い。面白い。面白い。
無論アントワヌ・ドワネルの他の作品も観てゐたら、より楽しく観賞できたには違ひあるまい。然し、然うではなくとも、十分に楽しめらるゝ一本であつた。


ところで、船の模型を操作する仕事つて、彼りや一体何だつたんだ?!