アニマル泉

家庭 4Kデジタルリマスター版のアニマル泉のレビュー・感想・評価

4.2
トリュフォーの「アントワーヌ・ドワネルの冒険」の第四作。トリュフォーは心情で繋がない。エピソードの断片を積み上げていく。新婚、出産、不倫、別居、仲直り、といった「家庭」のエピソードが自由奔放に紡がれる。
前半の共同アパートがせわしない。住人たちがけたたましい。ベッケルの下町ものみたいだ。
「花」が主題となっている。アントワーヌは花に着色する奇妙な仕事をしている。不倫相手のキョウコ(松本弘子)は花の蕾にラブレターを隠すが、開花すると波乱の展開になる。アントワーヌが再就職する水力研究所の模型船を操る仕事もかなりいかがわしい。
「階段」の主題も頻出する。売春宿の螺旋階段、キョウコの部屋も階段を登る。本作では「階段」は性的な装置となっている。ラストも階段だ。時間に遅いクリスティーヌ(クロード・ジャド)のコートとバッグを階段に投げ捨てる。アパートに同居するオペラ歌手の老夫婦が、かつての自分たちを見るようで微笑む。とてもルビッチだ。エンドタイトルもルビッチ風の額縁タイトルである。
よく「投げる」映画でもある。夫婦喧嘩でアントワーヌは投げ散らかしてマットレスを運び出す、そこへクリスティーヌが枕を投げつけるショットが面白い。二人のアパートは「青」が基調だ。壁もシーツも青い。二人がベッドに並んで、新聞を読む、会話する、眼鏡をかけさせる、このツーショットが至福だ。
「穴」をあけるショットも面白い。リフォームして壁に穴を開ける場面は愉快だ。
本作では映画作家への目配せも多い。電話に何回も席を立つアントワーヌに愛想を尽かして去るキョウコの置き手紙は日本語で「勝手にしやがれ」だ。「ジャン・ユスターシュに子供が出来たと伝えてくれ」、フォードの看板も挿入される。
カラービスタ。
アニマル泉

アニマル泉