【たぶん大人になった】
アントワーヌ・ドワネルの物語の最後。
過去4作の回想も散りばめ、また、現在、弁護士として活躍するコレットも登場して、総集編的な感じもある。このように現在進行形の場面と、過去の作品の場面をパッチワークした手法も当時は実験的だったらしい。
この作品は、「家庭」が大好評をはくしたことで製作が決まった。そして、アントワーヌも、コレットも20年の時を経て、ずっと同じ俳優というのは類をみないのだそうだ。
小説家になる夢を叶えたアントワーヌは、自伝的な映画を製作したフランソワ・トリュフォー自身のことなのではないのか。
そして、コレットのアントワーヌに対する想い、クリスチーヌのアントワーヌに対する想いは、自らを省みて、きっと過ぎ去った女性は、こんな風に自分のことを考えているだろうなということを想像した結果に違いない。
それに、アントワーヌが書いた小説がかなり自分寄りに脚色されていたのを見ると、トリュフォーの自伝的作品にも同様のことが言えるのかと、どこをよく見せようとしたのかなど気にもなる。
アントワーヌは大人になった。
それでも、女性を愛する衝動は抑えられないのだ。
とても人間的で率直な作品だと思う。