けんたろう

逃げ去る恋 4Kデジタルリマスター版のけんたろうのレビュー・感想・評価

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コレットの美貌に、目を撃ち抜かるゝおはなし。


何んだか、「アントワヌ・ドワネル」シリイズのお浚ひといふ印象を受くる。とはいへ、此の一つ前の回に観た『家庭』しか存ぜぬ私しでも、楽しく観賞でくる内容であつた。

抑〻本作は、回想シインと現在パアトの、絶え間ない繋がりに依りて展開せらる。故に、先づ「解らない」とは成らない。
そして、其の回想シインと現在パアトの繋がりや、回想シイン同士の繋がりが、中々巧妙。何度も云ふが、私しは『家庭』しか存ぜない。にも拘らず、此れらシリイズの映像が其のまゝ挿入せられるゝ回想シインには、感じ入りてしまうた。屹度、此の繋がりの演出の為めである。
斯うして観ると、シリイズ内で色々なシインに繋がりが有りて面白い。他の作品も早やく観たくなりてくる。

又た、アントワヌ・ドワネル以外のトリユフオ作品が登場するなど、サプライズが有るのも面白い。
トリユフオ作品四本目の観賞にして、漸く確信した。彼れには遊び心が有る。好きだ。

最後に、作品とは殆ど関係の無い──否。大いに関係が有る!──ことで恐縮だが、矢張り映画館である。暗闇の劇場。輝く銀幕。其処には、得も言われぬ多幸感が有る。本作に抱いた感慨深さの原因は、若しや此れにも有つたんではなからうか。
再三申し上げるが、私しはトリユフオ作品を殆ど観てをらぬ。然し憚らずに云はう。彼れの作品こそ、劇場で観るべきである。