『フランケンシュタイン対地底怪獣《バラゴン》』は小っちゃい頃に観たときはそんなに感じなかったが(ちなみにその時観たのはタコ登場版ですね)、ハードなストーリーでこりゃ完全に大人を対象にして作られたドラマだと思った。
他の東宝特撮映画と比べてディテールが細かく、例えば、フランケンシュタイン(の怪物)が光を怖がる理由も夜道でタクシーにはねられたというエクスキューズがちゃんと用意されている。
なので、終盤に高島忠夫を助けたフランケンシュタインがニック・アダムスや水野久美が運転する車の前に立ちはだかるシーンは、さりげなくフランケンシュタインが恐怖を克服したことを意味している。意外にも成長物語でもあるんですねぇ😲
あと本作は史上初の地底怪獣(よく見るとバラゴンの顔は可愛い)が登場する作品でもあるが、そのせいか怪獣が地底に棲むようになった経緯の考察とか丁寧に描かれている。
脇役ながら事件解決のキーマンとなる土屋嘉男が、田武謙三(新聞社)→石田茂樹(学者)→中村伸郎(とっても偉い学者)に対してバラゴンの存在について説明しに回る場面が格好よく、正直、主人公3人よりもよっぽど科学者然としている。
ちなみに知人から聞いた話だけど、土屋さんがご存命の頃、新文芸坐でのトークショーに出たときがあって、土屋さんがすっかり本作に出演したことを忘れていて司会のみうらじゅんにツッコまれていたそうな😅
それにしてもこの物語の発端となった不老不死の心臓からして設定が不気味だ。
終戦直前、秘密裏にドイツから日本へ不死の心臓が持ち運ばれるが、運びこまれた目的が絶対に死なない兵士を作り出すためだという。
この時点で発想がまるで仮面ライダーのショッカー((( ;゚Д゚)))
あと、本物のフランケンシュタインがどうか確認したかったら手か足を切り落とせと無茶苦茶なアドバイスするドイツ人科学者も相当マッドサイエンティストだ。
後の『サンダ対ガイラ』ほどではないが、バラバラになったウサギの死骸とか、檻の下敷きになり圧死する加藤春哉とか、東宝映画にしては描写がストレートなのも本作の特徴かなと思う。
しかし『サンダ対ガイラ』も同様だけどあの唐突なラストは何とかならないものなのだろうか。
あれだったら人間の世界に戻れないことを悟ったフランケンシュタインが燃え盛る炎の中に自ら消えていくというラストの方が情感あると思うのだが……。
■映画 DATA==========================
監督:本多猪四郎(本編)/円谷英二(特撮)
脚本:馬淵薫
製作:田中友幸
音楽:伊福部昭
撮影:小泉一(本編)/有川貞昌(特撮)/富岡素敬(特撮)
公開:1965年8月8日(日)