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リバー、流れないでよのTSのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
3.9
【2分に一度のタイムループ】82点
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監督:山口淳太
製作国:日本
ジャンル:コメディ
収録時間:86分
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 2023年劇場鑑賞28本目。
 元々観る予定はありませんでしたが、かなり評判が良いので急遽鑑賞しに行きました。ほとんど予備知識なしだったので、これがタイムループモノということに驚かされました。ジャケットを見るからに、ゆるりとした和風ドラマかなと勝手に思い切っていました。舞台は京都の貴船。由緒あるこの場所で、なんと2分に1度タイムループが起きてしまいます。主人公のミコトをはじめ、この難局をどう乗り越えていくのか。。

 最近の邦画でのタイムループモノ傑作として『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』が挙げられます。この作品は1週間に一度タイムループが起きてしまい、副題の通りにしていかないと前に進まないというもの。ところが今作はたったの2分。2分経てばまたリセットされてしまうのです。で、今作の面白いところはこの2分という尺の短さを逆に利用して、リアルタイムで映していきます。それも驚くことに、冒頭にタイトルが流れてからずっと。つまり2分ちょうどでその間の演技を終わらせないといけないため、なかなか骨が折れる仕事だったことでしょう。

 さらに面白いことに、2分経てばそれぞれの人物は初期位置に戻されますが、意識だけは継続しているため、知の伝達は可能となります。貴船一帯で起こる現象なので、みんなでこの難局を乗り越えようとしていきます。全体的にコメディ風に仕上がっているため、面白いです。特に3階に上がってから説明を受けるくだりあたりは面白かったです。2分となれば要点をまとめないといけない。そんな中空気の読めない人が、タイムリープとループの違いなんて聞いてくるから当事者たちはイライラするでしょう。

 一体この不思議な現象は何が原因なのか。『MONDAYS』を見た人なら余計な知恵がついているため、どうせこれが原因でしょと思ってしまうのかもしれません。が、一本とられましたね。まあこれは予想できなくても仕方ない。このコメディ路線だからこそ許せるオチ。恐ろしい現象が起きているのにどこか緊張感がない。それも今作の良いところでありましょう。

 中盤のミコトととある人物のやり取りは正直つまらなかったので、早く終わらないかなと思いましたが、後半でまた挽回してきましたので結果的には良作と感じました。ただ、『MONDAYS』は現代社会への痛烈な皮肉が効いていましたが、今作にはそのようなメッセージ性はあまりありませんでした。いや、注意深く観ると、時間よとまれと思いすぎてる現代人があまりにも多いということを皮肉めいているのかもしれません。

 2分のパートが恐らく40回近く続く異色作。作品自体も80分近くで終わるので気軽に観れます。中々のオススメです。
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