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リバー、流れないでよのkuuのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
3.8
『リバー、流れないでよ』
映倫区分 G
製作年 2023年。上映時間 86分。
上田誠率いる人気劇団『ヨーロッパ企画』が手がけたオリジナル長編映画第2作。
国内外で高評価を得た長編映画第1作『ドロステのはてで僕ら』に続いて上田が原案・脚本、同劇団の映像ディレクター・山口淳太が監督を務め、冬の京都・貴船を舞台に繰り返す2分間のタイムループから抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディ。
貴船神社と料理旅館『ふじや』の全面協力を得て、冬の貴船で撮影を敢行。
ミコト役の藤谷理子をはじめ、ヨーロッパ企画の俳優たちが多数出演し、鳥越裕貴、本上まなみ、早織、近藤芳正らが共演。
舞台『夜は短し歩けよ乙女』などで上田やヨーロッパ企画と縁のある、乃木坂46の久保史緒里が、物語の鍵を握る役どころで友情出演。

物語の舞台は冬の京都・貴船、伝統的な旅館で、裏手には川が流れている。
ある日、この地域の人々が2分ごとにリセットされるタイムループの中に閉じ込められ、逃げ場がなくなってしまうというシュールな出来事が起こる。
この現象に巻き込まれた人々は、何が起きているのかに気づき、その原因を突き止め、リセットの連続から抜け出す方法を見つけようと決意する。この目標とともに、宿の従業員や宿泊客も含め、全員が自分たちの苦悩を振り返る。

奈良の馴染みのない劇場にて鑑賞。

今作品は、低予算でも創造性を発揮できることを示す映画と云える。
意外にもとは失礼ながら、巧な脚本と組み合わされた映画作りの努力は賞賛に値するかな(映画素人なので失礼🙇)。
2分間のタイムループに閉じ込められた人々というコンセプトは独創的で、登場人物たちが互いにコミュニケーションを取りながら、面白いユーモアを交えてそれを処理するのを見るのは楽しい体験でした。
リセットされるたびに、影響を受けた人々が犠牲となり、状況ははるかに劇的なものとなる。
的確な編集と撮影技術によって、SF的要素がクリエイティブに仕上げられているのも良かったなぁ。
さらに、今作品の強みは、人間関係と時の流れについて語っている点にもある。
時間は絶えず川のように流れ、人々はその瞬間を通して何をしてきたのか、そして未来に目標を定めながら何をしてきたのかということ。
多くの人が過去に戻って物事を変えたいと思ったり、未来の結果を前もって見たいと思ったりするかもしれないが、そうではない。
それでも、人は前向きな結果に向かって努力することができる。
こうしたストーリーの要素は、映画に親近感を与えてくれた。
観てる側は、さまざまな人々が協力し合い、共通の問題を解決する姿を見る。
しかし、また、過去、現在、未来に関係する葛藤を通して、これらの人々が自分自身を評価するのを見ることができるのが良!!。
旅館で働くミコトは、同僚で恋人のタクがフランスに引っ越すことを悲しむ。
また、締め切りが迫る中、最新作をどこに持っていけばいいのか創作に悩む作家など、伝統的な設定の中にも興味深いゲストが登場する。
力強い脚本と巧な演出が、今作品をエンタメとしてだけでなく、心温まるものにしています。 
登場人物たちは印象的で、ユニークな個性を持ち、本筋とは別にそれぞれの物語を持っている。カリスマ的な演技も手伝って、彼らはまるで実在の人物のように感じられた。
役者たちは互いを見事に演じ分け、エンタメ性を高め、ファンタスティックなコンセプトに信憑性を持たせてた。
ミコト役の藤谷理子も良く、彼女のキャラにリアリズムをもたらし、同僚や旅館の宿泊客とのやり取りは見ていて楽しかった。
彼女の恋愛対象であるタクを演じる鳥越裕貴との相性も魅力的かな。
また、今作品の技術面は印象的でした。
山口淳太監督は、前作より少し多いとは云え、低予算で、より広い舞台を開拓し、彼と製作チームは期待を上回るものを作り上げたのは脱帽っす。
ロケ地を取り囲む旅館やその土地は、豊かな体験に欠かせない存在であり、観てる側は映画の登場人物とともにそのすべてを探索することになる。
そして川越一成による撮影は、編集で印象的に撮影されている。
しかし、連続する時間のループの中で、2分ごとに構成される長回しが多いことを考えれば、より称賛に値するかな。
滝本晃司の音楽は適切に組み込まれており、エンディングに流れるクルリの『Smile』も中々エエ曲やった。
クレバーで魅力的な今作品は低予算邦画としては最初から最後まで楽しめたことに驚きでした。
ユーモアとSFのバランスがよく、脚本と確かな演技によって大いに引き立てられ、同時に驚くほど心温まる作品に仕上がっている。
加えて、コンセプトや映画製作の手法も独創的で、低予算でも創造性を発揮できることを実証している。
山口監督が今後のプロジェクトでどのように時間を弄んでいくのか、想像するのも楽しみかな。

京の奥座敷として愛される避暑地・貴船を舞台に、オール貴船ロケで撮影された本作。
京都のアレコレを徒然に。

小生はガキの頃、京都で育ち、貴船のチョイ手前の二軒茶屋って所にツレもいて、夏場はよく遊びに行った。
その行きがてら貴船は単車で良く脚を運んだ。
夏の貴船は、今でも鮮明に覚えていても今作品のロケの時期は冬。
全く思い出とは違う冬の貴船。
この時期の貴船はあまり知らないので興味深く冬景色も堪能できた。
貴船と云えば、夏の時期になると、京には鴨川の床と共に、貴船にも川床がたつ。
その川床でボンボンたち(リッチな人たちの)が納涼しつつ、エエもん食って騒いでんのをよく見た。
小生は
つま楊枝咥えヨダレ垂らして横目で彼らを見たものです。
武士は食わねど高楊枝
ではなく、小生んとこは武士ではなく、廃れたとは云え、公家藤原家の一門の末裔。
貧乏華族はヨダレ垂らして高楊枝、
で貴船川床尻目に探索したものです。
その京都“元祖川床”発祥の老舗料理旅館『貴船ふじや』が舞台と、なんも興味深い。
今作品は冬の京の奥座敷の景色を愛でるにも恰好の作品じゃないかな。
この貴船の近くには、五条の大橋で出逢ったとされる弁慶と牛若丸(実際、牛若がいた時代は今の五条大橋はなく、北に数本上がった所の通称ドングリ橋がその舞台じゃないかと説が有力)で有名な、牛若こと、源義経が幼少期過ごしたとされる、鞍馬寺もある。
だからきっと、義経もこの辺りを駆け回ったに違いないと思えば、高下駄履いた天狗さえでてきそうな土地に風情さえ感じる場所です。
今年は無理でも、来年あたり今作品のロケ地等の探索を含めて観光するのも一興じゃないでしょうか。
観光客がごった返す京都(先ほど乗り換えで京都駅に降り立ちましたがクソ混んでました)だけど空いてればの話ですが。
また、冬場は正直オススメしかねます。
今作品は、ヨーロッパ企画の劇団員に加えて、京都住まいの本上まなみや近藤芳正もキャストとして参加してたし、言葉には、てか、方言にはわざとらしさはキツくは感じなかったかな。
また、主題歌は、京都出身のロックバンド・くるりときてる。
京都への思いがつまっとんなぁと、ついつい贔屓目で感想の星⭐加点0.5してます🙇。
手前味噌ばかりですが、これまたガキの頃に小生はロック・バンドを精出してやってた。
その頃に世話になったライブハウス(オーディションみたいなのに出たり、その後ライブをしたりと)は、今作品の主題歌を唄うくるりも縁が深い場所。
なんか、勝手に親近感ばかりが生まれる今作品でした。
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