ぶみ

リバー、流れないでよのぶみのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
3.0
また2分。

山口淳太監督、藤谷理子主演によるSFコメディ。
京の奥座敷と呼ばれる貴船を舞台に、繰り返す2分間のループから抜け出せなくなってしまった人々の姿を描く。
主人公となる料理旅館の仲井・ミコトを藤谷、料理人見習いのタクを鳥越裕貴、女将を本上まなみ、ミコトと同じ仲井を早織、旅館に宿泊している作家を近藤芳正が演じているほか、永野宗典、角田貴志、酒井善史、諏訪雅、石田剛太、中川晴樹、土佐和成といった本作品の企画制作である劇団ヨーロッパ企画のメンバーが集結。
ヨーロッパ企画と言えば、オリジナル長編作品第一弾となる同監督による『ドロステのはてで僕ら』で、SF要素があるドラマを、ほぼワンカットで撮り切るという離れ業を繰り出したのが記憶に新しいところだが、本作品では、2分経つと時間が戻って同じ場所からスタートするという、これまた奇抜な設定であり、2分間の長回しを何度となく繰り返す展開となっている。
そして、その設定の肝は、時間は戻っても、記憶はそのまま引き継がれることであり、徐々にそれぞれの思いが交錯していくところが、時に可笑しく、時にシリアスにと描かれていく。
また、主演となるミコトを演じた藤谷の実家が本作品のロケ地となっている京都・貴船の老舗料理旅館「貴船ふじや」であることも驚きであるとともに、友情出演で乃木坂46の久保史緒里が登場し、物語の鍵を握るキャラクターとして確かな存在感を放っていたのも見どころの一つ。
加えて、殆どのキャストが劇団メンバーであることから、どちらかと言えば舞台映えする演技が多かった中、久々にスクリーンで観た本上の自然な立ち振る舞いが際立っていたのも見逃せない。
ただ、私的には、前半にある編集者が風呂に戻るかどうかの件が笑いのピークであり、流石に2分を何度も繰り返されると飽きがきてしまったのは否めないと同時に、後半にあるプチ恋愛模様が、少し冗長と感じてしまったのは残念なところ。
アイデアは良く、オチも悪くないのだが、もう一捻り観客を飽きさせない工夫があると良かったかなと思うとともに、大道具さんは大変だけれども2分ごとに暗転させれば、舞台版もイケる一作。

初期位置、その下の辺りなんで。
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