井手雄一

リバー、流れないでよの井手雄一のレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
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ヨーロッパ企画の映画第二弾
「リバー、流れないでよ」を観に行った。
丑の刻参りでも有名な京都の貴船神社の老舗旅館を舞台とした、2分間のタイムループ✖️36回の群像劇。ホラーでなくコメディです。
物理的には、ループなので壊れたものも、死んだ人も生き返るけど、記憶は継続するため、破壊された人間関係は戻らないというフォーマットで、策を講じても何も解決に進まず、人間関係だけが変化しつつどんどん行き詰まって行く。
進むべき夢、止まりたい願望、変化したくない現在、行き詰まった現状など、登場人物それぞれが抱える「今」という時間に閉じ込められた様は、どこかコロナ禍に世界中の人が体験した時間感覚を思い出させる。
そんな中、物語中盤で繰り広げられる主人公ミコトと料理人タクの「アハハ、ウフフ」な恋の逃避行✖️4ループくらい、は、とても閉じられて不自由ながらも、前向きで無邪気な希望を描いたシーンで、コロナ禍当時に置かれていた若い人たちの思いを振り返って、ジーンと来てしまった。
登場人物全てが愛すべき描かれ方をしていて、最後はキャラクターそれぞれがスッキリ解決に向けて大団円かと思いきやの、主人公のミコトの宙ぶらりんな余韻が残る表情のラストがすごく良く、切ないながらも、「僕らが旅に出る理由」と「女の情念」を、現代の若い男女らしくチラリとさりげなく描き終わり!という割り切った終幕がなんか気持ちいい!

動き出したポストコロナの時代。。僕らはどこへ流れていくのか?
未来人ヒサメによれば、貴船の未来は明るいらしいが、世界の未来は紛争のみが動き出して、僕らは閉じられた時間でいったい何を学んだのだろう??
井手雄一

井手雄一