馬宮

リバー、流れないでよの馬宮のレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.5
すげえ〜。アイデアの勝利すぎる。
この映画はレビューも何も見ないで本当に【ループもの】なんだけど【2分間でループが繰り返すわけよ】だけを頭に入れてみんな見てほしい。自分が実際そうであったからね。

舞台は京都、貴船神社。
実際貴船神社に詣でたことがあるが、山間に沿うように存在する厳かな神社の佇まいは一目見ただけであ!とわかる。
その神社の目の前、老舗の旅館「ふじや」(実際にある。聖地巡礼ができる)の中で、日常を過ごす従業員と客たちが突然2分間のループに閉じ込められてしまう。
しかもなんと、全員しっかり記憶がある!?


こういったループ、一般的には1日とか、1週間とかが一般的だが、2分間……。予想通り「何が起きてるの???」と会話するだけでループが起こってしまう。実際そうなる。

当然ここは旅館なので、従業員は客に説明が必要になるし、客はパニックになるし……。
一癖も二癖もある客たちと従業員たちがどうやってこの奇怪なループを抜け出すのか?
テンポいいコメディ調で進んで行くので飽きにくく、次のループはどう動くんだ!? というワクワクでいっぱいである。
だからこそ途中、ちょっと明確に停滞するシーンがあるものの、それを補って余りある楽しさがある。

日本人特有の緊迫感のなさがまた、いい。
コメディなのかと思いきや突然スリラー、サスペンスっぽさ、シリアスなムードやロマンスっぽさ、とにかくこの2分間の繰り返しの中でそこまで詰め込む〜!? という感じの内容を詰め込んでくる。


「流れないでよ」というタイトルから想像できるように、この作品の根幹は「時間が止まってしまえばいいのに」という願いだ。
川は常にそこに存在しているが、1秒として同じ川のままではいない。

大体の人は明日に不安がある。安定しない未来より停滞した今を繰り返したがる。
……だからこそ、作中にあった一言
「あの人は未来へ進みたいんだね」
という言葉が、まるで憧れのように眩しいものに感じた。

終わりもすっきりしていて、軽やかな気持ちで楽しく観れる良映画でした。明日に進むことが怖いな、と少しでも思ったことのある人がみたら元気をちょっぴりもらえそうです。

追記:
ところで貴船さんが舞台なのに京都弁の人がほとんどいないから京都人は憤死するかもしれない。
馬宮

馬宮