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リバー、流れないでよのatomaのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.5
アイデアで勝利するタイプの映画というのがあるが、本作はまさにそれ。

『曲がれ!スプーン』とかいろいろ映画化してる劇団ヨーロッパ企画だが、2本目となる(戯曲を原作としない)劇場オリジナル作品は、登場人物の意思の外側で時間の巻き戻しが起こるタイプの「不随意型」のループもの。
すでに名作も多い類型だが、スタンダードを確立した『恋はデジャ・ヴ』が1日、『ミッション: 8ミニッツ』が相当短く、8分の間隔でループするところ、本作は一回のループがわずか2分。この短い時間のループが生み出す強いグルーヴ感が、本作の何よりの魅力だ。

ループの覚知(記憶の保持)が登場人物全員に生じる点も面白い。
なんせ登場人物が皆んなループを感じているので、話が早く(たしか3回目ですでに「ループ」という単語が登場していたと思う)、全員に一致した目的がもたらされるので、その下での協力と不和が描ける。

加えて、本作はロケーションが素晴らしい。
本作では最初のループ以降、2分間の各ループが、川床の同じ場所を起点として完全なワンカットで撮られる。2分という短すぎる時間のループを普通の映画のように撮ると、観てる側がループのテンポを感じにくいはずなので、ワンループ・ワンカットで緊張を持続させるというアイデアは必然的だったと思うのだが、誤魔化しの効かないワンカット撮影で映像的面白さが目減りしないのは、貴船の旅館(主演・藤谷理子の実家らしい!)のあのビジュアルのおかげだろう。

追記:
1日経って改めて思い返してみると、本作では雪のシーンが印象に残っている。特に中盤、主人公カップルが雪の深く積もった世界を逃避行するループは、脚本・演出的要求が画面を強く規定しているこの映画にあって、そこに収まりきらない特別な何かが起こっているという印象を与える。
このシーンを撮るために雪を待ったのだろうか?(24/4/20)
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