サマセット7

13人の命のサマセット7のレビュー・感想・評価

13人の命(2022年製作の映画)
4.3
監督は「アポロ13」「ビューティフルマインド」のロン・ハワード。
主演は「ロードオブザリング」「イースタンプロミス」のヴィゴ・モーテンセン。

[あらすじ]
2018年6月23日、タイ王国のタムルアン洞窟に遊びに入った少年サッカーチームの少年12人とコーチ1名は、予期せぬ豪雨により水没した洞窟に何の準備もなく閉じ込められる。
生存が危ぶまれ、全世界が注目する中、イギリスから呼び寄せられた洞窟専門ダイバーのリック(ヴィゴ・モーテンセン)とジョン(コリン・ファレル)は、7月2日、少年たちの生存を確認する。
世間が喜びに包まれる中、リックとジョンは絶望する。
確認した場所は、入り口から約5キロメートルの地点。
辿り着くまでに、流れが急で、障害物多数、視界ゼロの洞窟潜水を要する場所が多数、長距離存在する。
プロ中のプロのダイバーでも到達困難で、片道何時間もかかる道のりを、ダイビングの経験なく、疲弊した少年たちと共に踏破することは不可能であった。
無情にも洞窟内の酸素は刻一刻と失われ、さらに、洞窟全てが冠水する雨季が近づいていた…。

[情報]
2018年タイ王国にて、実際にあった洞窟遭難事件の、実写映画化作品。
AmazonPrimeVideo独占で配信中。

この事件は日本でも大きく報じられた。
しかし、救出の詳細は、リアルタイムではほとんど伝えられていなかったと思われる。
その理由は、今作を観るとわかる。

同事件は、極めてスリリングな題材であり、すでに、2019年にタイ映画「The CAVE」、2021年ドキュメンタリー映画「TheRescue」がそれぞれ公開されている。
Netflixもこの事件をもとにしたドラマの配信を予定しているらしい。

今作は「バックドラフト」「アポロ13」という歴史に名高いパニック映画を撮っているロン・ハワードを監督に起用し、ヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレル(マイアミ・バイス)、ジョエル・エドガートン(ゼロダークサーティ)といったハリウッドスターを配役した、堂々たる本格ハリウッド大作である。

ロン・ハワードは、タイの文化に敬意を持って今作を作ったようで、登場するタイ人はタイ語で話す。
洞窟内のスキューバ・ダイビングシーンが頻出するが、俳優たちが洞窟ダイバーたちから専門のトレーニングを受けた上で、実際にスタントに挑んでいるらしい。

今作は2022年8月5日より全世界でAmazonPrimeVideoにて独占配信されており、アメリカでの限定公開以外に劇場公開はされていないようである。
製作費、興収とも不明。
評価サイトを見るに、一般視聴者層を中心に高い支持を得ているようである。

[見どころ]
スリルに次ぐスリルの連続!!!
息もつかせぬとはこのこと!!!
2時間半がこんなに短く感じたことは、最近は経験がない!!!
これが実話だとは!!!となること請け合いの衝撃の真実!!!
これは、奇跡だわ…。
変に気を衒わない演出も、キャスト陣の抑えた演技も、素敵です!!!

[感想]
これは、凄い!!!

著名な映画評論家の方がラジオでオススメされていたので、興味が出て視聴開始。
あっという間に引き込まれて、2時間半、一気見した。

冒頭に少年たちが洞窟に入った後は、危機のシーンが次から次とテンポ良く出てくるため、退屈する暇がない。

緊迫感を失わないのは、ロン・ハワード監督のリアリティ重視の堅実な演出のおかげもあろうが、何よりも、実話としての重みと、ストーリーの強靭さが勝因だろう。

何しろ、実話自体が凄まじい。
無垢な少年たち、厳然たるタイムリミットの存在、初めはなかったキャラクター同士の連携が徐々に改善されていくカタルシス、危険の連続と、実話がそのままドラマに満ちている。

特に、少年たちを助けるため、救出隊がとった数々の決断!!!
瞠目!!!

地図などを使い、位置関係もわかりやすく、話に集中できるのも上手い。
ちょっとでもスキューバの経験があれば、より緊迫感が味わえるかも知れない。
細かい感情表現や傷の描写が効いていて、ゴリゴリと救出メンバーの体力とメンタルが削られている様が、ガンガン伝わってくる。

キャストも良い。
アラゴルン役で有名なヴィゴ・モーテンセンは好きな俳優だが、今作の渋い演技も素晴らしかった。

これは、オススメです!!!

[テーマ考]
今作は、13人の少年のために、周辺住民、タイ政府、軍、各国の洞窟ダイバー、世界中の人々が、見返りなく、力を合わせる様を描いた作品である。
すなわち、善意の集合が、奇跡を呼ぶ、ということがテーマかと思う。

テーマに照らし、印象的なシーンは数多い。
米農家!!
知事!!!
ブリーフィング!!!
ハリス!!!
お守り!!!

紛争と断絶が続く世界にあって、このテーマは一層眩しい。

また、実話ベースのコーチや少年たちの精神力にも驚かされる。
どれほどの大人たちが、闇の中、食糧もない絶望的な状況で、パニックにならずに、平静を保てるだろうか。
瞑想か!?瞑想がすごいのか!??
東洋思想も捨てたものではない、と思える。
全編通じた、タイの文化へのリスペクトの賜物だろう。

[まとめ]
ベテラン監督による、凄まじい実話をベースとした、パニック・スリラー映画の秀作。

配信オリジナル映画、あまり見てなかったけど、不見識だったと言わざるを得ない。
このクラスの配信オリジナル映画が他にもあるなら、是非見てみたい。