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哭悲/The Sadnessのsymaxのレビュー・感想・評価

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)
3.5
…その涙は、心に残る"罪悪感"が流させる…
…だが、その衝動は抑えられない…

その朝はいつもの通り静かに始まった…いつもの通り、同棲中の恋人カイティンを地下鉄の駅まで送るジュンジョー…いつもの店、いつものルーティン、いつもの…その老婆が現れるまでは…

いつもの通勤風景…カイティンが乗る電車内に、男が一人…サングラスの奥から流れる一粒の涙…
男が取り出したのは…ナイフ…

ジュンジョーとカイティン、それぞれの目の前に広がるのは、阿鼻叫喚の地獄…

カイティンを救う為、血みどろの地獄をひたすら進むジュンジョー…ジュンジョーが助けに来るまで、血みどろになりながら、地獄をひたすら逃げるカイティン…"本当に愛しているわ"…"必ず助けに行くから"…


いやいや、噂に違わぬ凄まじい鬼畜ホラーでした…

コロナをモデルにしたかのような新種のウイルス"アルヴィン"が突然変異を起こし、人の大脳に影響を与え、凶暴性を助長させる疫病が蔓延した台湾を舞台に離ればなれとなった恋人達の逃避行を血みどろの地獄絵で魅せる怪作です。

本作のフォーマットはゾンビであることは間違いないのですが、感染者はゾンビではありません。
ウイルスによって、理性のタガが外れ本能を抑える事が出来ず、更に凶暴性も増しているので、思いついたあらゆる残虐行為をやってしまうというもの。

死んで腐っている訳ではないので、意識もあるし話すことも出来る。

自分がやっている事が、残虐すぎる事は心の奥底では分かっているので、罪悪感の涙を流す…でも欲望は抑えられない…ゾンビよりもタチが悪い…

"ゾンビ"というよりも"28日後…"に近いのかもしれません。

本作の鬼畜度を上げているのは、抑えられない欲望が、暴力性だったり、食欲である以上に性欲についてもタガが外れてしまっているということ…

そう、もう想像するだけでも悍ましく、反吐が出る展開が画面上に広がるのです…とは言え、ギリギリ直接表現は避けられ、音や仕草によって観客の想像で見せるのですが、それでも鬼畜ボルテージは高いので、無理な人は観ない方が良いと強く思います。

更に、ここ最近見る事が無かったゴア描写の連続で、観客の目の前に広がるのは血みどろの世界ですから、スプラッター系が苦手な方にもオススメできません…

では、怖いかというと…不気味ではあるがさほど怖くないというのが私の印象です。

というのも、若干テンポが悪いと感じるところがところどころありまして、"追われて、逃げる"という肝心の部分が半減しているように感じます。

"ドーン・オブ・ザ・デッド"や"新感染"、"28日後…"のような"追われる怖さの疾走感"が甘いように感じ、せっかくの感染者との駆け引きがモタモタした感じに見えるのは勿体無いです。

ですが、ただひたすらに逃げるだけだった非感染者が一転して、感染者と戦い倒す場面になると、どちらが残虐なのか分からなくなってくる複雑な心境を抱かせるシーンは秀逸だと感じます。

何組かカップルが鑑賞していましたが、途中退席もチラホラ…この夏の公開作の中では、グロ度No.1な本作…クソ暑い毎日を血飛沫と反吐が出る程のグロでぶっ飛ばすのも一興かもしれません…
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