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島守の塔のあんずのレビュー・感想・評価

島守の塔(2022年製作の映画)
3.8
幼い頃、たまたまテレビでやっていた沖縄戦の映画の集団自決のシーンを観て、ものすごく怖くて悲しかったのを未だに覚えている。それ以来、太平洋戦争、特に沖縄戦を題材にした映画は観ていなかった。無意識に避けていたのかもしれない。

戦闘シーンは当時の映像が挟まれるのみで、多分、劇中に米兵は直接は出て来なかった。アメリカと戦っているのだけど、身近にもっと県民を脅かす敵や思想があったというやるせなさを感じた。軍のトップは県民の命を保護しようという気はさらさらなかった。だから、あの時代に「生きろ!」と強く諭した島田知事(萩原聖人)の勇気や人間として大切なものを失わずに何とか命を繋ごうとした姿は尊かった。

知事付きの職員役を吉岡里帆が熱演。こういう真っ直ぐな芯のある役が本当に合うなと思う。ひたむきな彼女から発せられる熱量に圧倒される。その影響か、鑑賞翌日、私は彼女の出る舞台のチケットを取っていた。

音楽に違和感を感じるシーンが多かったのが残念。

戦争は人間が始めるものだから、人間が終わらせることが出来る。ちょうどお盆に来ていた台風のように、ただ通り過ぎるのを待つしかない訳ではない。戦争をしないという選択も出来るのに、未だに愚かにも繰り返す。各国の領土や利権がどうとか言う前に、世界が協力しないと地球自体が大変なことになる、なっている。それに気付かないわけがないのに、国を動かす人たちは自分が生きているうちのことしか考えていないのかな。島田知事のような人に上に立って貰いたい。
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