Jun潤

ジェントルマンのJun潤のネタバレレビュー・内容・結末

ジェントルマン(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

2024.02.29

Filmarksで見つけた作品。

物語はとある取調室から始まるー。
室内にいるのは、身なりを整え余裕そうに振る舞うスーツ姿の男と、身なりも整えていない今にも寝落ちしそうな男。
容疑がかかっているのはスーツ姿の男、名はチ・ヒョンス、探偵業を生業としていた。
後から入ってきた検事のキム・ファジンに対し、ヒョンスはこれまでの経緯を語り始める。
ヒョンスは元彼から犬を取り戻したいという少女の奇妙な依頼を請け、郊外にある洋館へと向かっていた。
一人で行くと言って聞かない少女を送り出し、ヒョンスが一人車の前で待っていると、森の中から犬の鳴き声が。
不審に思い森の中へ入っていくと、ヒョンスは謎の男に襲われる。
抵抗するも背後から近付いてきたもう一人の男に気絶させられ、目を覚まして車に戻ったところをカン・スンジュン検事に逮捕されてしまった。
連行される途中、カンの運転する車は事故を起こし、再び気絶したヒョンスが目を覚ますと、なんとカンと身分が入れ替わっているだけでなく、意識不明ということになっているヒョンスが身元不明の容疑者になってしまっていた。
カンが意識を取り戻すまで約1週間、ヒョンスは興信所の仲間達と共に、行方不明中だという依頼主の少女を探し始める。
そんなヒョンスたちの元に、それまでに大きな事件を検挙してきたキムが現れ、捜査協力を申し入れてきた。
捜査が進んでいく中で明らかになっていく、少女売春と巨大な権力の影。
しかしキムはヒョンスの正体にも探りを入れ始めるー。

これぞ“必ず騙される”ってやつじゃあないですか!
えぇえぇ普通に騙されましたよ。
途中まで考察してはは〜んこういうことだなとか思っていた自分が恥ずかしい。

まず序盤のシーンにどう繋がっていくのか、を考えながら観ることが今作の注目ポイントの一つのはずですが、協力関係にあるはずのヒョンスとキムの間に何が起きてしまうのか、互いが信じる正義がぶつかってしまうのかとか考えていると、思ったよりも時系列が序盤に戻るまでが長い。
おいおいこれじゃあ相当などんでん返しがないとこっちは納得しないぜぇという煽りも今作には効かんでしょう。
十分すぎるほどに予想以上のどんでん返しが待ってくれているのだから。

序盤に繋がった後、明らかになるヒョンスの本当の目的、それを達成しようとしても、本当の巨悪には一矢報いることさえ絶望的な状況。
しかしそんな状況すらも既にヒョンスの掌の上。
今作は復讐に走ろうとしているクライムサスペンスではなく、義賊的なダークヒーローが大活躍するピカレスク・サスペンス。
一番最初の動機となったことの小ささからの、達成した計画の大きさへのギャップがでかすぎて、しかもその分が面白さに繋がっているのだからこれはまたいい作品ですね。

映像的には、さすが韓国には良いイケおじ俳優も、三枚目なキャラクターを演じられる方も、社会的なセリフも難なく発する女優も、大きな権力を振りかざす器の小さな中年俳優も取り揃えているし、それぞれの魅力が如何なく発揮されていました。
ド派手なカースタントや街中を全力疾走するシーンも、よく撮影許可が降りたなと、映画に対する力の入れ具合にある邦画界との差をつくづく感じました。
スローモーションや、テンポを重視しているように思える作戦遂行シーン、コメディリリーフや社会派の場面を長回しで入れるなど、映像作品としての完成度もなかなかに高い。

こういうチームものは舞台や標的を変えればいくらでもシリーズ化できそうですが、悪く言えば出オチ、良く言えば今作単体の完成度が高いため、今作の話の終わり方のようにスッキリ完結、ということで個人的にはよろしいかと思います。
Jun潤

Jun潤