Jun潤

告白、あるいは完璧な弁護のJun潤のレビュー・感想・評価

告白、あるいは完璧な弁護(2020年製作の映画)
3.9
2023.06.25

予告を見て気になった作品。
果たしてこれはサスペンスなのか、クライムなのか、どちらにせよ韓国発であればもはやある程度の安心感が持てますね。
雰囲気がどこか『別れる決心』に似ているような気もしますがどうなのでしょう。

ホテルの一室で起きた女性の密室殺人事件。
容疑者として逮捕されたのは、殺されたキム・セヒと不倫している上に事件が起きた時部屋にいたIT企業社長のユ・ミンホだった。
ミンホは無罪を主張し、不起訴となった後は山奥にある湖畔の別荘に身を隠す。
そして知り合いの弁護士からの紹介で、敏腕の女性弁護士ヤン・シネが訪ねてくる。
彼女は無罪を獲得するために改めて事件当日ホテルの一室で起きた出来事を聴取する。
ミンホの供述ではたしかに彼が犯人である可能性が高いものの、無罪である可能性も否定できない。
ヤンはミンホの主張を確たるものにするため、一枚の行方不明者捜索の紙を差し出す。
行方不明として届けられていた青年の名はハン・ソンジェ。
彼は、殺人事件の数ヶ月前にミンホとキムが起こしてしまった自動車事故の被害者だった。
その事故の詳細を元に進めるミンホを無罪にするための筋書き作り。
果たしてそれは、ミンホの告白か、それともミンホを無罪に導くための虚構かー。

なぁるほどなぁ!そうきましたか。
目が肥えていればいるほど序盤でストーリーの裏に隠された真相に勘付いてしまいそうですが、それすらも観ている側を倒錯させるための仕掛け。
むしろ登場人物も、その口から語られる言葉も、全てを疑えば疑うほどに筋書きは崩れ、帳尻は合わなくなり、真相の見えない袋小路に迷い込むか、どんな真実も握り潰してしまう闇を感じてしまう、ある意味恐ろしい作品。
今作の要素を列挙していくとクライム・サスペンス・ノワール・スリラー。
ノワールとして観るとファム・ファタールはキムか、ヤンか、それともミンホ?

今作は事前情報をなるべく入れず、鑑賞時点での人それぞれのそれまでの知見を元に、今作をミステリか、サスペンスか、クライム側視点の法廷ものか、はたまたリベンジエンタメか、どのように捉えられるかも楽しんで鑑賞してほしいですね。
終わり方に対しても、観る人それぞれがどう受け取るかによって、胸のすく思いをするか、はたまた苦味を感じるか、ストーリーの奥行き含めてとても惹き込まれる仕上がりになっているので、そこにも期待する価値はアリ。

個人的に後半まではストーリーや設定、キャラクターも綺麗に整えられていて、観やすい作りになっていたことに感嘆としましたが、終盤では偶然と思惑の境界線が有耶無耶になってしまっていたように感じてしまいました。
愛情でも執念でも、人の想いが起こす奇跡によって正義は証明できるのか、小さな嘆きや叫び、抵抗などは到底及ばない、恐ろしいほどに利己的で巨大な悪が現実には立ちはだかっているのか、その辺を曖昧にはしてほしくなかったところですね。
Jun潤

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