近本光司

ショーイング・アップの近本光司のレビュー・感想・評価

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)
4.5
2022年のカンヌ映画祭のラインナップ発表記者会見で、ティエリー・フレモーは本作を film de décroissance と評していた。アメリカ映画のオルタナティブとしての一種の斜陽。にもかかわらず、ここには何かあたらしいものが生まれようとしているときのフィーリングが克明に映っている。『Night Moves』で描かれた環境問題をめぐる映画上映会で、わたしたちは何をすべきかと問われた監督が One big project はない、無数の small projects があるだけだ、と語った科白が思い起こされる。つまりは本作もライカートによるちいさな革命なのだ。最後に用意された夕陽に照らされた路地をゆく二人の後ろ姿を捉え、徐々にカメラが上昇していくロングショットに見いだすちいさな希望(『雨月物語』のラストショットを想起)。傑作。