ある種のミニマリズム的な官能を、低予算のうちに描いたこの作品に面白さがあるとするなら、仕掛けや人間ドラマなどを総合したうえでの、やはりミニマリズム的な構成にかかっていたように思う。
気がつくと立方体(cube)の空間に閉じ込められていた男女6人による脱出劇。その6人とは別の匿名的な1人の男が、オープニングでバラバラになることで、端的に映画の方向を示してもいる。
脱出の鍵に素数(prime number)が用いられたり、立方体(cube)の空間がどのように組み合わされているのかを計算したりなど、数学的な要素が盛り込まれているものの、だからと言って数学的な訳ではない。
この作品の面白さのポイントは、演出される緊張感にせよ、舞台設定の不条理性にせよ、ギリギリまで切り詰められたなかで、ミニマリスティックにそれらを立ち上げていたことが、最後の余韻として残ることのように僕には感じられる。
そうした面白さを振り返って思うのは、 映画が 映画になるための条件とは何かということであり、それはモニュメント(像)とモーメント(瞬間)が大きな要件となるのではないか。本作のモニュメント(像)とは立方体(cube)の空間であり、モーメント(瞬間)とは脱出に向かって交差するそれぞれのヒューマンドラマだった。
裏を返せば、それ以外にほとんど面白さはないと思ってみたときに、面白さとは、つまりはそういうことだという気もする。けれどたしかにここには、 映画としての官能が宿っている。
★カナダ