よふかし

EO イーオーのよふかしのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
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ロバのEOが思いがけずすることになる旅路のすぐ側でカメラを構え続けたような作品。
EO の一人称の物語であるが、言葉を発しないロバの主人公を物語るため視点が縦横無尽に移動するという映画ならではの表現。
映像は時に彼の目線になり、彼をすり抜ける風になり、彼自身の瞳を映す視点になり、関わった人物達の行動を覗き見する拡張した視点になり…
雄大な自然が映りほっとしたかと思えばビビットな光が点滅し悪意や危険を暗示させる、景色と色と音楽と音とが組み合わさったイメージで綴る物語が新鮮だった。

関わった人間の誰もがつい話しかけずにいられない不思議な愛嬌を持つロバのEOが主人公。
人間模様が断片的に映るが、主人公にとってはどこまでも他人事であり景色の一部であり、それを同じ人間の目線を通して見るから愚かさが辛く、でも自分と重なり少し愛おしくなる。

物言わぬ動物の感情の部分は観る者に委ねている、だからこそEOの断片を切り取って物語に納めているという行為に人間の意図を強く感じた。
製作陣が動物への愛に溢れていることはよく分かるからこそ、ラストで明言される「撮影に際し動物を一切傷つけていません」の文言とは誰に対しての何の宣言なのか改めて考えてしまう。
何か作品を作る時、人間含めたあらゆる動物の心身を一切傷付けないなんてことがあり得るのか。突き詰めれば生きていく上で一切周りを傷付けないなんてことは出来ないのではないか。

EO観たって言ったら「えっ、あのホラーのやつ…?」と聞かれた。確かにサイケデリックな映像は多いけど、それにしてもポスター怖すぎるよね…笑
個人的にロバってすごく好きな動物で、うつむいて考え事をしているように見える伏し目がちな優しい目とふさふさな毛並みが映る度にきゅんとした。
EO役は計6匹で演じているらしい。可愛いねぇ
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