タチユロ氏

EO イーオーのタチユロ氏のレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
4.0
ロバのEOが人間世界を周遊する。

イエジー・スコリモフスキ御年82歳にしての新作はロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』を語り直すような完全にロバ主人公、ロバ視点のお話。

スコリモフスキの映画を見ると毎回「感性が若いな〜」と感心する。『イレブン・ミニッツ』で犬の主観視点ショットを挿入していた時もそう思ったが、この映画だって20代の新進気鋭の監督が作ったと言われても納得してしまうような感性の若さがある。

ロバの視点を通して世界を見ると、人間たちの愚か者っぷりに辟易としてしまう。あくまで動物(特に馬やロバ)をなにかのツールとしてしか思っていないような立ち振る舞いや、ご立派な立て前の末に結局は食べちゃう矛盾など。そして中盤でEOの身に降りかかる許せない事態と、それを起こした人間たちのあまりの愚か者っぷり。

でもその一方で立派ではないかもしれないけどEOを愛している元飼い主、農場で支援の必要な子供たちと触れ合うシーンなど人間と動物の間にもリスペクトがあれば良い関係も結びうるということも見せてくれる。

冒頭の復活のイメージと最後に歩いていくEOの向かう先によってキリスト教的な円環構造を作っているようにも見えて、しっかりとブレッソンの映画に則りつつスコリモフスキの映画へ変奏したのがよくわかる。
タチユロ氏

タチユロ氏