サーカス団から連れ去られたロバが人と関わり会いながら放浪の旅をするお話
落ち着いた作りの映画かと思いきや滅茶苦茶アヴァンギャルドでビックリ。赤と黒が支配する照明演出やジャンプカットなどを多く用いてかなり力強くロバの動きを捉えていたのが良かった。
原作となった『バルタザール〜』は基本的に出てくる人の殆どが悪役という物語だったものの、本作はどちらかと言うと「悪」に認定されるような人物は少なく、殆どの登場人物が彼ら彼女らなりの善性で行動していたのが印象的だった。思えばロバが放浪をするキッカケとなるのも動物愛護団体という「善」的な役割だったし。しかしそれらの善性は全て空回り、人間中心的な構図に組み込まれてしまう。ブレッソンとは違った不条理の味わいなものの、確かにこの人間中心的な社会の不条理を捉えるためロバの視点を通すというのはなかなか面白く、だからこそ現代でリメイクしたんだろうなと思った。
にしても作りが本当にアヴァンギャルドで最高。ギャスパー・ノエと近しい感じの演出で凄い好き。